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福岡!企業!元気!のための法律ワンポイント 《平成24年9月号》(創刊号)
契約書の作成について

【はじめに】
 今回から「そこが知りたい」シリーズを執筆することになりました。どうぞ、よろしくお願いします。今回は、契約書の作成について、基本的な姿勢を説明したいと思います。
 「契約書はつくっておいたほうがいいですか?」と聞かれることがあります。
 「契約書が無いから契約が成立しない」と考えている場合もあるようですし、わざわざ契約書を作成する手間を嫌っているだけのこともあるようです。
 このような場合にアドバイスをするとすれば、「契約書を作成するデメリットは何ですか?」と尋ね、有利な契約書を作ることをお勧めすることになります。

【契約書が無いと契約不成立?】
 スーパーで買い物をするときに、わざわざ売買契約書など作成しません。それでもスーパーと顧客との間で売買契約は成立しています。つまり、「契約書が無い」から「契約は成立していない」ということはありません。
 では、なぜ契約書を作成するのでしょうか?
 それは、当事者の合意事項を書面に残し、証拠としたいからです。
 たとえば、不動産を売買するときに契約書が無いということは考えられません。金額が4000万円なのか5000万円なのか、はっきりしないと購入は出来ないはずです。こういう場合には、通常、契約書を作成することになります。
 また購入した土地に欠陥があったらどうするのか、どのような責任が発生するのか、合意内容を契約書に記載するはずです。

【契約書の役割】
 契約書は当事者間の合意を明確にするものです。口約束では、当事者間で何が正しいのか全く分からなくなってしまいます。
 何を合意したのか、互いの当事者の権利・義務は何か、トラブルになった場合にはどのように解決がなされるのか、契約書には、これらが明確に示されていることが最低限必要です。そして、合意をする場合には、この「第三者にとっても」というところがポイントです。もし紛争となれば、裁判所に判断を求めなければならないかもしれません。裁判所にも合意内容をはっきりとわかってもらう必要がありますから、当事者だけが分かるような契約書にはしないことが重要です。
 専門家ではない方が作成される契約書が分かりにくくなるパターンとしては、関係の無い第三者が突然出てくる場合、当事者間の複数の契約関係(複数の異なる売買)等が混在して書かれている場合があります。当事者には理解できても、第三者には一読しても理解できないことになります。

【契約書を有利に使うには?】
 契約書に定めていない項目については、民法、商法といった法律、あるいは慣習により解釈されることになります。逆に、法律が許容する範囲であれば、当事者間で合意を定めることも出来ます。このようにして、特に有利な条項とした合意内容については、特に契約書面とすることが求められることは言うまでもありません。紛争となった場合には、契約書を示し「契約書で合意の通りです」と相手方の言い訳を許さず、あっさり解決できるように備える必要があります。
 せっかく有利な条件で契約しながら、契約書を作成しない、ということでは、後々、「言った。言わない。」の論争になりかねません。このような事態を避けるためにも、しっかりと書面化することが必要です。

【契約書の作成】
 現在では、書店・インターネットで多数の契約書の雛形を手に入れることができます。多くの契約書例がありますが、これらの契約書を比較してみると、その内容が微妙に異なることに気が付くはずです。また、短い契約書もあれば、長い契約書もあることが分かります。契約書は長いほうがよいのでしょうか?これらは、どのように使えばよいのでしょうか。
 一般的に、短い契約書は、どちらに有利ということもなく、最低限の合意を記載したものだと思われます。例えば、金銭消費貸借契約書(借金の契約書)では、お金を貸したこと、返済期限だけが記載されているかもしれません。しかし、実際には分割返済だったり、その分割返済をした場合にはどうなる、といった合意をしていることもあると思います。合意しているのであれば、その場合には、その旨の記載が必要になります。やや細かくなりますが、分割返済の合意だけ記載し、分割返済を怠った場合のことを記載しなかった場合には、貸主の不利益は極めて大きなものとなりかねません。ですから、長い契約書には、自らが不利益を受けることがないように、どちらに有利な内容が記載されているのか、よく見極めることが必要です。
 雛形のとおり作成したから安心ということはありません。落とし穴がるかもしれませんから、ご注意ください。
 このように契約書と一言で言っても簡単な話ではありません。場合によっては、自らを不利にするかもしれません。
 次号以降では、具体的な契約書作成を例に説明をしたいと思います。

回答者 弁護士 小川 剛
小川・橘法律事務所
810-0041福岡市中央区大名2-4-22新日本ビル8F
電話092-771-1200 FAX 092-771-1233
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