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福岡!企業!元気!のための法律ワンポイント 《平成24年10月号》
売買契約書の作成について

【はじめに】
 前回、本号以降、契約書の例を説明すると予告しました。早速、今回から数回かけて、契約で最も多いと思われる「売買契約」をテーマに説明をしたいと思います。

【売買契約とは?】
 売買契約とは、皆様イメージのとおり、「売る」と「買う」の契約です。少し難しく言うと「財産権を移転することに対し、対価を支払うことを約束する」という契約です。
 ですから、売買契約書に書くべきこととして、
 ・売主
 ・買主
 ・売買の目的となる財産権(物、数量など)
 ・金額
 は不可欠です。特に、後で金額でもめそうだ、という時には、金額をしっかりと書き込むことが必要です。数量でもめそうだ、という場合には、その数量をしっかりと書き込むことが必要です。これが、簡単なようで意外と難しいことがあります。

【100坪100万円の意味】
 具体的に検討します。「目的物:福岡市中央区Aの土地100坪、代金:100万円」と契約書に記載し、売買契約を締結したとします。何もなければ、このような記載で足りるかもしれません。
 ところが、A土地を実際に測量したら、対象の土地は90坪しかありませんでした。このとき買主は「1坪1万円という話で100万円という契約をしたのだから、90坪しか無い以上、90万円しか支払わない」と考えるかもしれません。売主は「Aの土地を100万円」という話なのだから、多少坪数が違っても100万円で契約した」と考えるかもしれません。
 このとき「100坪100万円」の合意はどのように解釈されるのでしょうか。  不動産売買においては、坪単価×実測数という販売方法も多いですから、買主側の主張も説得的です。一方で、売主のいうような契約の仕方も一般的と言えますから、こちらの主張も説得的です。
 結局、この契約書では、金額という重要な部分について多義的な解釈が可能となるので、契約書としては検討が不十分だったと言わざるを得ません。もちろん、裁判となれば、契約書記載内容以外の事情等も考慮の上、売主側あるいは買主側のどちらかの言い分が認められることになりますが、やはり無用な紛争というべきでしょう。
 このような事態を回避するならば、買主としては、「坪単価1万円とし、実測の上、代金を決定し清算する」という一文を入れるべきでした。逆に売主としては「現状有姿での売買とし、実測により坪数に不足があっても代金の清算をしない」旨の一文を入れるべきでした。

【売買契約に関するその他の注意点】
 単純な売買契約でもトラブルは絶えません。リスクを想定し続けてもキリがありませんが、考えられることに対しては、備えるべきです。
 例えば、商品の引き渡し時はいつなのか、それまでに商品が故障した場合には、誰が責任を負うのでしょうか。田舎の古い家を「古民家を再築する材料としたい」というから安く売っただけなのに、その家の雨漏りの修理代金を請求された、このとき修理代金を支払わなければいけないのでしょうか。
 前者は引き渡しと危険負担の問題、後者は瑕疵担保の問題です。引き渡し時期は代金回収の問題とも関連してきます。
 これらは、いずれも契約書の内容によって、随分とトラブルを回避できるようになりますが、その検討は次号とさせてください。

回答者 弁護士 小川 剛
小川・橘法律事務所
810-0041福岡市中央区大名2-4-22新日本ビル8F
電話092-771-1200 FAX 092-771-1233
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