【はじめに】
前回は、業務委託契約について説明をし、その中で、秘密保持契約を別途検討したいとしていましたので、今回は、秘密保持契約について説明をします。
【秘密保持に関する合意を要する場面】
秘密保持に関する合意を要するのは、端的には、誰かを秘密に関与させる場合です。例えば、従業員を採用する場合、すでに採用している従業員が秘密に接する場合、他社と取引をする場合、共同研究をする場合、工場見学等で部外者を招く場合等が考えられます。
【秘密とは】
そもそも秘密とはなんでしょうか。
高い独自技術をもったメーカー、顧客の個人情報といったもの、市場を驚かせるようなM&Aに関する極秘情報のようなインサイダー情報など、いろいろなものが考えれます。
場合によっては、ノウハウといったものも秘密となるかもしれません。
ただし、法律上あるいは契約上、保護の対象になる秘密とは、「秘密として管理されていること」、「有用な営業上又は技術上の情報であること」、「公然と知られていないこと」が要件となります。
【公然と知られていないこと】
たとえば、化粧品メーカーが自社製品のホームページで、製造原材料を表示しているとします。このような情報は、公然と知ることが出来るものであり、秘密とはなりません。ただし、その配合割合、配合方法といった情報は秘密となりうるかもしれません。
【秘密管理性】
相応に秘密として管理されていなければ、秘密として扱われることはありません。秘密として管理されているというためには、(1)情報にアクセスできる者を制限すること、(2)情報にアクセスした者にそれが秘密であると認識できること、が必要です。
電子データであれば、アクセス権限をごく少数に限る、紙媒体であれば鍵のかかったロッカーに保管し、秘密であることを明記するなどの対応が必要です。
契約書においても「秘密」の対象を「秘密と記載のある文書」といった特定をする必要があります。
つまり、秘密保持契約を締結する前に、秘密として保護されるためには、相応の秘密管理体制を構築する必要があると言えます。
【従業員との関係】
秘密は部外者だけではなく、内部のスタッフが接触するものですから、社内従業員等に対しても、入社時、退社時の誓約書、就業規則あるいは秘密管理規則等により、秘密遵守体制を構築し、秘密漏えいを予防することが必要です。
【具体的な契約書等の例】
経済産業省のホームページには、秘密保持契約、就業規則の文例など、サンプルが多数あり参考になります。是非、一度参照してみてください(ただし、契約書をそのまま使用するのでは、実態とあわないこともありえますので、ご注意ください)。
回答者 弁護士 小川 剛
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