これまで、契約書作成時のヒントをまとめてきましたが、ここからは、ちょっとテーマを変えて、民事裁判手続きについて連載したいと思います。
第1回目は「送達」と住所の調査について説明します。
【民事裁判と刑事裁判】
すごくおおざっぱに分けると裁判には、民事事件(家事事件を含む)と刑事事件とに分けることができます。
刑事裁判は、いわゆる刑事事件を犯したと思われる被告人に有罪、無罪、懲役刑などを判断する手続きであり、検察官が被告人を起訴することからはじまります。
【民事裁判における裁判のスタート】
民事裁判のスタートは、訴状の提出です。訴状には、請求をする内容を記載するほか、相手方の住所、氏名等を記載しなければなりません。この訴状を提出した当事者を原告、請求を受ける相手方を被告といいます。
裁判は、被告にも言い分を主張させる機会を原則として与えるべきですので、まずは、裁判所が被告に対し、裁判所に提出された訴状を郵送します。
この郵送手続きを送達といいます。この郵送ができなければ、訴訟はスタートしないことになります。
【送達先の調査(住民票の調査)】
A株式会社の小川社長に金を貸したが、返してくれないので小川社長に金を返すように訴えるとします。
このときに、A社が存在すればいいのですが、A社も休眠状態で、小川社長の住所も分からないということがあります。
こういう場合には、A社の登記簿を調べることからスタートします。そうすると、少なくともA社の登記時点の取締役の住所が記載されていることが分かります。
その後、住民票住所を転居しているのであれば、住民票を調査することになります。
弁護士には、このような訴訟の相手方に対し、住民票の調査をし、自治体に回答を求める権利が認められています。
こうして、住民票の調査を行うことになり、相当な確率で相手方の所在が明らかとなります。
少し脱線しますが、この弁護士による住民票の調査に対しては、一部の自治体については、その調査の対象を制限するような条例が定められています。しかしながら、このような条例によっては、裁判から逃げる被告の存在を助長することになりかねません。日本の請求権の消滅時効は2年や3年と短く定められているものもあります。2、3年逃げ切られて裁判もできないということでは納得ができません。このような現実からは、上記のような条例は適切ではないと考えます。
【その他の住所調査の可能性】
たとえば、住所は知らないが、相手方の車のナンバーが分かる、携帯電話番号が分かる、メールアドレスが分かる、という場合に、うまくいけば相手方の所在地が明らかとなる可能性があります。
これは、弁護士会照会制度による場合が多いのですが、その調査の詳細は、お近くの弁護士にお問い合わせいただければと思います(弁護士は、相手方の所在調査だけの受任をすることはありません)。
【送達後の手続き】
裁判所から訴状と一緒に第一回期日の呼び出し状が同封されています。こうして、無事に送達ができた場合には、予定どおり第一回期日へと進むことができるのです。
回答者 弁護士 小川 剛
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