弁護士の視点で

                     前へ<<               >>次へ
福岡!企業!元気!のための法律ワンポイント 《平成26年9月号》
民事訴訟手続きについてD証拠とは

  前回は民事裁判での事実認定と証拠について説明しました。

 今回は、証拠についてもう少し説明をしたいと思います。
 相談を受けていると、どうしても「あなたの言い分が真実であれば、あなたは裁判で勝てる可能性はありますが、証拠は何かありますか」と尋ねなければいけません。
 裁判になった場合には、証拠が無いとその事実が認定されないからです。
 相談者の方が「A氏が自分から金を借りたことは、Bも知っている」「Bが証人になってくれる」と言われることがよくあります。
 これで証拠として十分か、というと、悩ましいところです。
 Bさんは、あなたの味方とは限りません。裁判になると、協力してくれないかもしれません。そうすると、こちらの証拠は何もないことになってしまいます。
 また、いざ裁判になると、Bさんが知っている理由は、「お金を渡すところに立ち会った」ということではなく、「(相談者が)Aに金を貸していると、いつも話しをしていた」ということだけかもしれません。そうなると、Bさんが知っている事実は、Aさんが話しをしていた、ということではなく、目撃者でもないことになります。これでは、証拠としては、頼りないということになります。
 そこで、どうしても、契約書や領収証といった証拠がないか確認することになります。
 証拠があれば、苦労しない、ということかもしれませんが、「証拠がない」ということは、それだけで不利な事実となります。
 例えば、高額のお金を支払えば、領収証を作成するのが当然です。そうであるにも関わらず、領収証が無いということであれば、不自然だと思われます。
 同様に、高額の取引であれば、契約書を作成するでしょうし、お金を貸したのであれば、借用書を作成するでしょう。
 このように、通常あるべき書類は無いという事実は、裁判を闘う上では、厳しいものがあります。
 この通常あるような証拠が当たり前にある、ということが裁判では重要であり、客観的な物、押印がなされた書面が重要となります。
 そして、このような書面等に比べると、人の供述は危ういものがあります。一般論として言えば、証拠の価値としては、書面等の客観的証拠が重要であるということになります。
 裁判には証拠が必要だということを意識すると、契約書、領収証は大事なものであって、正確に作成し、きちんと保存しなければいけないと分かると思います。
 紛争を予防する上で、証拠は重要です。後々が不安であれば、作成すべき書面等、専門家に相談をされることをお勧めします。

回答者 弁護士 小川 剛
小川・橘法律事務所
810-0041福岡市中央区大名2-4-22新日本ビル8F
電話092-771-1200 FAX 092-771-1233
HP  http://t-o-law.com/
                     前へ<<               >>次へ
弁護士の視点でリストに戻る