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福岡!企業!元気!のための法律ワンポイント 《平成29年4月号》
相続・遺言@ 遺言書は必要ですか?
  質 問

【質問内容】
 遺言書を作成したほうがいいと良く聞きますが、どうして作成しなければいけないのですか?
  特に作成をしたほうがいい場合というのは、どのような場合ですか?

  回 答

 今月からは、相続、遺言について検討したいと思います。
 まず、ご質問のとおり、遺言書は必ず作成しなければいけないものではありません。遺言がなくても、相続人で話し合いをすればいいのです。また、民法は法定相続人、その法定相続割合を定めていますので、その割合で決めてしまえばいいのです。実際に、遺言書を作成していない方のほうがはるかに多いのが現実ではないでしょうか。
 自分の死んだ後のことは、関係ない。遺言書を作成したことで、かえって誰かに恨まれるのは嫌だ、法律どおりに分ければいいんだ、という考え方も十分にありうるところです。
 しかし、どうしても、遺言書を作成しなければ、困ったことになる場合というのもあります。

 1 まず、財産を残す必要がある相手が法定相続人ではない場合というのがありえます。
 例えば、内縁関係にあるパートナーに財産を残したい場合です。内縁関係によって法定相続人となれる法制度にはなっていません。
 最近では、同棲婚というのも報道されるようになりましたが、これも同様です。内縁関係にあるパートナーに財産を残したいのであれば、遺言書がなければ実現しません。仮に、法定相続人がいるのであれば、法定相続人が全財産を取得するとお考え下さい。
 遺言書が無いことで、パートナーが生活をする拠点、日々の生活費を失う可能性がありますので、十分にご注意ください。
 そのほか、法定相続人ではない方に財産を渡したい方、法定相続人のうち誰かには財産を渡したくない、というような場合には、遺言書の作成は必須です。

 2 相続財産に自社株式等が含まれる場合
 オーナー社長が100%の株式を持っている場合には、その株式は遺産分割が終わるまでは準共有状態として、株主権の行使が全くできないことになります。
 そうすると、株主権の行使ができないので、株主総会の開催すら危ぶまれます。
 たとえば、親族で経営している会社のうち60パーセントの株式を有している方が死亡したとします。このとき、この60パーセントの株式を有している方のうち、議決権を行使する方が決まらない場合には、残りの40パーセントの株主が株主総会で決議をする可能性もありえるのです。
 自社株式を有している場合には、会社の存続、従業員の雇用といった重大な問題に直面しますので、遺言書の作成、あるいは、生前に後継者と株式の行方を定める等の対応が不可欠です。
 また、医療法人の経営者も、後継者を明らかにし、持分が分散しないように対策する必要があります。
 あわせてこれらの場合には、相続税が大きなものとなりかねませんので、納税資金の確保をしなければなりません。

3 法定相続人の中に音信不通の親族がいる
 遺言書が無い場合には、遺産分割には法定相続人全員の署名、押印による遺産分割協議がなされなければなりません。仮に音信普通の親族がいる場合には、不在者財産管理人の選任が必要となるなど、手続きに相当な手間を要するほか、その音信不通の親族にも、法定相続分の財産を残さなければならなくなります。
 このような場合には、遺言書の作成、遺言執行者の選任が強く求められます。

4 後妻が関与するなど、相続人間ですでに複雑な事情がある
 相続の問題がなくとも親族間に火種がある場合には、相続の際にも紛争となる可能性が高いです。
 典型例は、後妻と元妻の子の争いです。あるいは、臨終婚といいますか、死亡直前に相続分の2分の1を取得することになる配偶者が突然に現れるような場合です。

 上記に該当する場合には、遺言書は必ず必要となります。是非、ご準備を検討されてください。次回以降は、より具体的な問題を検討したいと思います。   

回答者 弁護士 小川 剛
小川・橘法律事務所
810-0041福岡市中央区大名2-4-22新日本ビル8F
電話092-771-1200 FAX 092-771-1233

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