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福岡!企業!元気!のための法律ワンポイント 《平成29年9月号》
相続・遺言E 遺留分を回避したい
  質 問

【質問内容】
 遺留分を回避するような遺言書の記載はできないでしょうか。

  回 答

 法的には難しい遺留分対策:事実上の効果を期待する
 遺留分対策が困難であることはこれまでに説明いたしました。
 そのような場合に、法的にはあまり意味が無いが、遺留分を超えて特定の方に相続させたい理由を遺言書に記載することで事実上の遺留分行使を断念させる記載をしてはどうか、とアドバイスをすることがあります。
 つまり、なぜ長男に多くの財産を遺すのか、遺言書に明記をしておけば、二男は権利行使を控えるのではないか、という作戦です。法的な効力ではなく、事実上の二男による遺留分請求に対する抑止を意図したものとなります。このような記載を付言事項といいます。
 付言事項の具体的な例として、以下のような文例が考えられます。

例1 長男は病気であることを指摘するもの
   長男は障害があり働くことができませんし、独身のままです。せめて介護サービスを受けるのであれば、この不動産の賃料収入で生活をしてもらうしかありません。そこで、遺産の大部分である賃貸アパートは長男に相続させることにしました。二男も大変だと思うけど、長男の障害を考えて、遺留分減殺請求は控えてください。

例2 特別受益の存在を指摘するもの
   私は遺産のうち大部分を長男に相続させることにしました。二男には、生前に医学部に進学する際の大学の費用を負担しましたし、一時期、私と同居する予定でしたので自宅建築の際にも1000万円を渡しています。結果的に、私はその家に住むこともありませんでした。一方、長男にはこれまで特段の援助をしてきませんでした。そこで、唯一の財産である自宅の土地、建物は長男に相続させるのが平等だと考えたのです。二男には、相応の収入もあるのだから、遺留分減殺請求は控えて、兄弟仲良く過ごしてください。

例3 相続させる財産は負担付であること
   自宅の土地、建物、預貯金についても長男に相続させることにしました。長男と長男の妻は、私の妻の介護を献身的に行い、同居をしてくれています。私の死亡後には、私の妻の介護を引き続き、長男夫婦にお願いをしたいのです。これから妻の介護はますます大変になり、自宅の改装が必要になるかもしれません。また、長男夫婦も定年を迎え、妻の面倒を見る経済的余裕も無いと思います。もし妻を介護施設に入所させる場合には、費用も必要でしょうから、相続させる預貯金で不足する場合には、この自宅の不動産を処分してください。長男夫婦が今後も私の妻の介護を続けることを条件として、私の財産を全て長男に相続させることにしました。二男には申し訳ないが、わずかな財産しか遺されておらず、この財産で妻を介護するには、このようにするのが適当だと考えました。これまで長男夫婦は介護を熱心にしてくれています。
   二男には私の気持ちを汲んでいただき、遺留分減殺請求などされたり、相続のことで兄弟がもめないようにご配慮いただきたいと思います。

例4 二男は不良であること
   二男は覚せい剤で逮捕され、私は何度も裁判所で情状証人として証言までしました。きっと更正してくれると信じていました。しかし、二男は、現在も暴力団員のままのようですし、ギャンブルによる借金を重ねている状況です。借金の面倒を見ることは出来ません。私が遺産を残しても、二男はギャンブルに使うのではないかと気になって仕方がありません。
   二男には働いたお金で生活をして欲しいのです。遺産を手にすることは望ましくありません。私の気持ちを理解して、遺言書に従い、遺留分の請求をするなど、働かずして財産を得ようなど考えないでください。

 いかがでしょうか。あなたが、この二男だった場合、遺留分減殺請求を控えようと考えられましたか?(例4の二男は間違いなく請求するようにも思われますが)
 そうであれば、付言事項を活用するという方法も有効かもしれません。
 また、仮に遺留分減殺請求を受けた場合にでも、例2のように特別受益が明記されていると、紛争となった場合にも、特別受益の存在が明らかになるという効果もあります。
 付言事項で対応をするということも考えてみてもいいと思われます。

回答者 弁護士 小川 剛
小川・橘法律事務所
810-0041福岡市中央区大名2-4-22新日本ビル8F
電話092-771-1200 FAX 092-771-1233

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