遺留分で得られる財産の算定の問題となります。以下、簡単に説明します。
1 まずは法定相続分と遺留分割合を確認する
直系尊属のみが相続人の場合を除いては、遺留分割合は法定相続分の2分の1になります。本来、法定相続分が3分の1を有するのであれば、遺留分割合は、その2分の1で6分の1になります。
簡単に言えば、遺産の6分の1を請求する権利を有することになります。
2 具体的な計算
訴訟において、実際にどの程度の財産を取得できるのかを計算するには、「遺留分計算シート」を用いることが一般的だと思います。この遺留分計算シートは東京弁護士会のホームページ内に公開されています(「遺留分計算シート」と検索してください)。
以下、この計算表が手元にある前提で説明します。
遺贈(遺言書に記載された財産)の名称と評価額を遺言書により取得する欄に入力します。
同様に、死因贈与、未処理遺産を入力することになります。
次に、生前贈与を記載します。まず、相続開始1年以内に贈与がなされていれば、それは遺留分の対象となりますので、そのような贈与を入力します。
その次に特別受益を入力します。この特別受益に該当するといわれているのは、@婚姻、養子縁組のための贈与、A生計の資本としての生前贈与や遺贈、などです。
具体的には、事業資金を提供した、自宅購入資金を提供した、といった場合がこれに該当します。このような生前贈与を一覧に入力していくことになります。
最後に債務の額を入力します。
そうすると、「遺留分減殺計算表」に計算結果が表示されることになります。この表に計算される個別的遺留分の額が、想定される遺留分減殺請求権の評価額です。
たとえば、遺留分の基礎となる財産が1億円、遺留分額が3000万円といったように具体的に金額が算出されます。
もっとも、これは3000万円を受領できるという単純な話ではありません。例えば、遺産が1億円の不動産のみであったとすれば、その不動産について、1億分の3000の持分を有する、ということになるのです。
ただ、一般的には、それに見合う金額を支払うことになるのが多く、これを価額賠償といいます。
ここまでの流れで、遺留分の計算が出来ることになるので、算定表によれば計算は容易なように思われるかもしれません。
しかし、実際には遺産には不動産が含まれることも多く、実際に処分して金銭を分けるのではなく、誰かが承継することになることが一般的ですので、その評価は大きな争点となる例が多いです。
不動産を取得する方にとっては金額を下げたいところですし、遺留分を請求する側にとっては評価を高くしたいということになります。
このような場合には不動産鑑定士に査定を依頼することもありますが、査定額に幅が生じるのも実態であり、なかなか難しい問題となります。この場合、最終的には双方の査定を踏まえた裁判所での判断となります。
以上
回答者 弁護士 小川 剛
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