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福岡!企業!元気!のための法律ワンポイント 《平成30年2月号》
相続・遺言J 相続制度の見直しについて(前半)
  質 問

【質問内容】
 最近、相続法の見直しがなされるような新聞記事を読みました。どのような点が変更になるのでしょうか。

  回 答

1 相続法の改正について
 相続法が改正されるかどうかは正式に決まってはいません。私見では、改正はそんなに近い話ではない気がしています。しかし、法改正を含む議論はされており、本年16日に、改正案の概要が示されるに至りました(法制審の要綱案の発表として報道されています)。
 このような議論がなされている背景を理解することは、現状の社会制度の課題を把握することに繋がりますので、少し確認をしたいと思います。法改正の案で示された主な変更点としては、配偶者居住権、非相続人親族による特別寄与、遺留分制度、自筆遺言の法務省保管など、多くの新たな制度が検討されています。

2 配偶者居住権について
 典型的には、夫の死後、妻が夫名義の自宅に死ぬまで生活できる権利ということのようです。資産の大部分を占める不動産を取得する場合、法定相続分で遺産を分割するとなると、自宅を取得すると、預貯金は子が受け取り、妻は預貯金が受領できないという問題を回避できる、ということが狙いのようです。
 私見ですが、私のところに相談に来られるケースでは、このような点がひっかかって紛争になっている例はほとんどありません・・。母、子のパターンで紛争になっているケースは概ね前妻の子と後妻のパターンです。このパターンで、配偶者居住権を活用する場合には、前妻の子が不動産を取得し、後妻がその不動産に対する使用権を取得するということになります。合意の前提として、使用権を評価しなければなりませんが、これは難しい問題です。平均的な妻の余命をもとに、賃料を考慮して評価するのが妥当なのかもしれませんが、これまでになかった権利ですから、相当に難しい問題になります。居住権は不動産登記され、子が不動産を売却しても居住権は残ることが想定されていると思われるので、この居住権の効力は大きいといえ、一般的には、居住権の財産的価値は相当大きいと考えられると思われます。
 もしかしたら居住権の査定次第では、税務上のメリットが生じるのかもしれませんが、本来の趣旨はそのようなことではないと思いますので、どうなるのか、よくわかりません。
 あるいは、子が事業をしており、居住権を設定しておけば事業がうまくいかなくなっても母は自宅に居住できる(自分も居住できる)、という使い方が考えられるかもしれません。
 いずれにせよ、未確定の制度であり、相続問題の回避の特効薬とはいえませんが、選択肢の一つになりうると考えればよいのではないかと思われます。
 なお、この立法の背景にある配偶者の保護をしたいのであれば、家も預金も配偶者に残す旨の遺言書を作成すればよいことです。

3 相続人以外の特別の寄与についての評価
 改正法では、相続人以外の親族による特別の寄与についての評価について予定されています。資産増加や介護に貢献したという特別の寄与について金銭請求権を認めるものです。
 介護等はなかなか金銭評価が難しいものであり、これまでも相続人の不満が大きいところでした。今回の制度は相続人以外の寄与を検討するものであり、この点に対応するものではありませんが、制度改正により、寄与分に関する適正な評価に関する議論、考え方の整理がなされることが望まれます。

4 その他、遺留分、自筆証書遺言を法務省が保管する制度など、重要な案が示されています。この点については次回検討したいと思います。

                                 以上

回答者 弁護士 小川 剛
小川・橘法律事務所
810-0041福岡市中央区大名2-4-22新日本ビル8F
電話092-771-1200 FAX 092-771-1233

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