前回、M&Aのフローについて、スタートの部分をご紹介いたしました。なお、現在では、インターネット上でM&Aの仲介を行う、あるいは、インターネットでのビジネスを売買することもあります。このあたりについては、機会があれば、今後、改めて説明をしたいと思います。
さて、M&Aの可能性がある売手と買手が出会ったとしても、相手のことはまだよくわかりません。
そこで、少しずつ条件面、売買内容の合意形成がなされていくことになります。
1 売買価格の交渉(売手の意向)
まず、売手にとっては、いくら以上でなければ売れないのか、という点が重要です。
交渉相手は、その価格を出すつもりがないのであれば、交渉相手に値しません。
そこで、買手がその価格を出すつもりなのか、それが自己資金によるものなのか、どの金融機関の融資によるものなのか、見極めなければなりません。
2 買手による調査
買手としては、売手の金額で買っても良いと考えて交渉に臨むのでしょうが、その価格が妥当であるのか、リスクが無いか知りたいので、買手の情報が欲しいことになります。
主には決算書の情報でしょうが、それだけでは相手の会社がどのようなものかは分かりません。
一方で、売手にとっては、企業秘密を簡単に出すことはできません。出すことができる資料の範囲は限定をしたいところですし、本当に購入するような企業に対してしか開示をするつもりはありません。
そこで、無料で出せる情報の範囲、基本合意を作成した後に出せる情報の範囲、最後まで出せない情報の範囲を検討しておく必要があります。
また、情報を開示するに際しては、秘密保持契約の締結をするのが一般的です。
おそらく、秘密保持契約 → 決算書等の簡易な情報 → 基本合意 → 詳細な情報の開示 →契約成立 → 最終情報 の開示となる場合が多いと思われます。
3 秘密保持契約と売主情報の開示
売手は情報を開示するにあたり、決算書等の情報を開示することになります。
その中には取引先が分かる資料、役員報酬など知られたくない情報が多々含まれています。そもそも、会社の価値を維持するためには、会社を売りに出している事実自体が秘密にされなければなりません。
そこで、その情報の開示対象者を限定する、開示した場合には損害賠償請求の対象になる事などを定めることになります。
厳しい秘密保持契約では、資料の管理体制、複写の禁止といった制限を加える場合もありえます。
こうして、資料の開示を受けた買手は、売手の希望する金額に見合いそうであるか、検討をすることになります。
ここまでの段階で費用(買主が売主あるいは仲介会社に支払う費用)を要する場合もあるようです。
こうして、売主と買主が価格の点で概ね合意できそうであれば、基本合意契約の締結を目指すことになります。
この続きは次回にご案内します。
以上
回答者 弁護士 小川 剛
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