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福岡!企業!元気!のための法律ワンポイント 《令和元年9月号》
事業承継、M&AについてC

 売手A社と買手B社との間で、総額1億円での売買をベースに検討を開始することになりました。
 ここで、売買のスキームの検討をしたいと思います。
 会社あるいは事業の売買の方法としては、一般的には、以下の方法がとられることがおいです。
 ・株式譲渡 会社の事業の全てを取得する方法
 ・事業譲渡 事業(事業の一部)を譲渡する方法
 この株式譲渡と事業譲渡について、メリット、デメリットを検討したいと思います。

1 株式譲渡
(1)株式譲渡とは?
 典型的には、100%のオーナー株主がおり、株式を売却することで、会社をそのままの状態で売却し、オーナーが変更されることになります。
 簡便な手続きですので、リタイアするオーナーがイメージする事業承継は、株式の譲渡を想定している場合がほとんどではないかと思います。
(2)株式譲渡のデメリットとは? 株式譲渡の注意点は?
 ただし、この株式譲渡による手続きが難しい場合があります。買手の視点で説明します。
@株主特定の必要性
 株主が分散している可能性がある場合です。オーナー企業だと思っていたら、原始定款に出資者で親戚の名前があった、その親戚とは全く連絡をとっていない、というようなことは珍しくありません。
 株主が一部わからない、100%株主と証明できない場合には、このような手続きは難しい場合があります。買手としては、100%の株主と証明できるか、数%でも株主がいるかは大きな違いがあります。株主代表訴訟等のリスクや株主総会に瑕疵があったとされるなど、困難な問題があります。
 ただし、90%以上の大株主の証明ができるのであれば、スクイーズアウトの手法によるなど、100%株主の状況を作ることも手続き的には可能です。この説明は、別途の機会に行いたいと思います。
A簿外債務の存在
 簿外債務が多い場合には、優良な事業あるいは資産のみを譲渡するほうが望ましい場合があります。ただし、優良事業のみを売却する事業譲渡のスキームの場合には、詐害行為とならないように注意をする必要があります。
B課税関係
 事業譲渡の場合には、経費としての資産の購入となりますが、株式譲渡により株式を取得する場合には、買い手にとっては経費となりません。
 一方、売手にとっては、株式の売却により、売却益に課税がなされることになります。
 なお、近時、課税関係を意識し、不動産所有会社を売買することで実質的に不動産売買を実現するという例も見られるところです。

 以上のような場合には、株式譲渡によらずに、事業譲渡をすることが選択されることがあります。

 事業譲渡の注意点については、次回、説明をしたいと思います。

                                        以上

回答者 弁護士 小川 剛
小川・橘法律事務所
810-0041福岡市中央区大名2-4-22新日本ビル8F
電話092-771-1200 FAX 092-771-1233

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