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福岡!企業!元気!のための法律ワンポイント 《令和元年10月号》
事業承継、M&AについてD

 売手A社と買手B社との間で、総額1億円での売買をベースに検討を開始することになりました。  ここで、売買のスキームの検討をしたいと思います。
 会社あるいは事業の売買の方法としては、一般的には、以下の方法がとられることがおいです。
 ・株式譲渡 会社の事業の全てを取得する方法
 ・事業譲渡 事業(事業の一部)を譲渡する方法
 前回は、この株式譲渡について説明をしましたので、今回は事業譲渡のメリット、デメリットを検討したいと思います。

(1)事業譲渡とは?
 例えば、食品加工事業と飲食店事業を展開している企業が、食品加工事業に専念し、飲食店事業のみを1億円で譲渡するような場合が想定されます。規模は大きいのですが、実質は個々の財産(店舗不動産や材料等)の集合体の売買契約と考えることができます。このため、譲渡側は売却損益について、法人税や消費税の課税対象となります。
 会社の一部を売却したい場合で、株式の譲渡としたい場合には、会社あるいは株式を分割した後でなければ実現できません。
このように事業の一部を売却する場合に事業譲渡は考えられる手続です。
もっとも、実質的には全事業を売却する場合でもあっても、メリット、デメリットを考慮し、株式譲渡ではなく、事業譲渡を選択する場合もあります。

(2)事業譲渡のメリット、デメリットは?
 前回、株式譲渡の際に、株主の特定が出来なければ、株式を売却することが難しいことを説明しました。
@株主の全員の特定までは必要がないこと
 事業譲渡の場合にも、株主総会の手続が必要ですが、多くは特別決議によれば足ります。例えば、オーナーが80%の株式を有していて、他の株主に不安な点がある場合には、株主総会の特別決議は問題がないのですから、事業譲渡とするほうが無難かと思われます。
A簿外債務
 通常は、対象となる事業についての負債も承継しますが、簿外の思わぬ債務について負担を回避できる可能性があります。
B課税関係
 前述のとおり、売手にとっては資産の売却で課税がありますが、買手にとっては資産の購入なので、中古資産等の取得による損金算入のメリットがありえます。
C手続が煩雑となること
 逆に、事業譲渡の大きなデメリットの一つは、資産の個々の取引、売買となるので、例えば、株主が変わっただけであれば、不動産登記の変更は必要がありませんが、事業譲渡であれば、対象となる不動産の個々の名義変更が必要となります。
 また、取引先との関係で、事業譲渡の場合には口座の変更等、取引先との契約を整理する必要が生じます(株式の譲渡でも、取引先の承認は要する場面はあると思われます)。また、許認可なども注意が必要となります。

 このように、事業譲渡と株式譲渡では、メリット、デメリットがありますし、買手のメリットと売手のメリットが衝突する可能性もありますので、十分な検討が必要となります。

                                        以上

回答者 弁護士 小川 剛
小川・橘法律事務所
810-0041福岡市中央区大名2-4-22新日本ビル8F
電話092-771-1200 FAX 092-771-1233

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