Q 株式の売買を考えていますが、相手の株主の一部が名義株のようです。どのように対応したらいいでしょうか?
前回までに、事業譲渡と株式譲渡による売買の二つのスキームを比べてみました。株式を譲渡する場合には、大前提として、売主が本当に株主であるのか確認する必要があります。
本来、会社は株主名簿を作成しており、会社の株主は誰かはっきりするものだと思います。
しかしながら、過去において、株主の数の際定数が7名だった時代など、名前だけ借りているような株主も存在しました。いわゆる名義株です。名前だけなので、その後連絡をとってもいないかもしれませんし、死亡している例もあります。
売主Aが「名義だけ貸しているけど、本当は私の株だから大丈夫です」という話をしてくる場合、それを真に受けることが出来るか、信用してその人から購入してよいのか、という問題があります。
買主としては、名義だけの株主なのか、本当に出資をした株主なのか見分けはつきません。少数株主とはいえ、知らない株主がいるのは気持ちが悪いものですし、解消しておくべき問題です。
この場合、名義株の株主から、「名義株であり、本当はA氏の株ですので、会社に名義書換を請求します」といった文面に署名、実印での押印をいただくことができれば、Aさんの株式であると信頼できそうです。株式の名義書換が完了してから株式譲渡によるM&Aを完了すれば問題ありません。
実際には、このようにスムーズにいくとは限りません。まず、名義人が死亡している場合です。名義株主の相続人に接触すると、何もしらない相続人は、いきなりAが「名義株だったから印鑑を押して」と訪問してきても到底、押印できないと思われます。相続人間でもめているようなケースもありえますし、時間が経過している場合には、相続人多数で誰から印鑑をもらうべきかという問題が生じることもあります。
このような場合には、相続人に金銭を支払って解決するような例が多いと思います。もっとも、多くは謝金として株式価値よりも低額な支払をすることが多いと思われますが、スピードを重視する場合には、プレミアムをつけることもありえます。
同様に名義株だったにも関わらず、真の株主だと主張される場合もあります。出資をした裏づけ等の資料があればいいのですが、前項と同様に金銭解決をしている例が多いのではないかと思います。
株主の問題はM&Aの際には重要な問題ですので、十分に確認が必要です。次回も引き続き、株式に関する説明をさせていただきます。
以上
回答者 弁護士 小川 剛
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