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福岡!企業!元気!のための法律ワンポイント 《令和3年10月号》
M&Aについて 法務DD(事業用資産の検討)について

 前回までに法務DDのうちでも重要な労務面に関するDDについて説明をしてきました。
 今回は、その他のチェック項目として、事業用資産に関するDD、について説明をしたいと思います。

1 事業用資産のDD
  対象企業が行う事業は、多くは本社、工場、機械など、資産が存在します。不動産については所有、賃貸それぞれです。
  DDにおいては、大前提としてMA後にも使用できるのか、資産として意味を持つのかという点を確認しなければなりません。

(1)不動産の調査
 不動産については、その所有が対象会社なのか、賃貸なのかで大きく変わります。

(2)対象会社所有不動産の場合
 対象会社所有不動産の場合には不動産はMAの対価に含まれることになりますので、その資産計上の適正を確認することになります。
 不動産価値がMA価格に大きく影響する場合には、鑑定士による評価を実施する場合もあります。
 所有不動産の場合には、不動産自体に問題がないのか、例えば、境界に関する紛争や近隣からクレームがあるといったトラブルがないのか、土壌汚染、排水等の問題がないのか、修繕の必要といった点を確認する必要があります。
 また、当然ながら法的な問題点、登記簿上の記載に誤りがないか、どのような担保が設定されているのか、共同担保の内容はどのようなものか確認をする必要があります。
 その他、自社ビルという場合には、第三者に賃貸している場合もあります。この場合には賃貸借契約の内容、敷金等、確認をしなければいけません。

(3)賃貸物件の場合
 賃貸であれば、そもそも、MAによって賃貸借契約を承継することができるのかが重要です。
 一般的な賃貸借契約では、賃借人の実質的な変更は契約解除事由とされている例が少なくありません。実際に、MAの場合でも賃貸借契約をそのまま承継する場合もありますが、不動産所有者から、拒否をされる、あるいは、賃料を値上げすることを求められる例もあります。
 承継に不可欠な不動産であれば、あらかじめオーナーから書面による承諾を得ることは不可欠です。また、賃貸借契約は定期借家となっている場合もあります。この場合には期間の設定などを考慮しなければなりません。
 そのほか、売主の個人所有となっている場合もあります。その場合には、不動産を買い取るのか、賃貸借契約を締結するのかを検討しなければなりません。  

 次回はさらにMAの際のDDについて検討をしたいと思います。

                                                 以上
 本説明は本原稿掲載日(令和3年9月)時点の情報により記載され、適切に更新されていない可能性がありますので、ご注意下さい。

回答者 弁護士 小川 剛
小川・橘法律事務所
810-0041福岡市中央区大名2-4-22新日本ビル8F
電話092-771-1200 FAX 092-771-1233
HP  http://t-o-law.com/
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