今回は、法務DDの中でも負債、担保に関するDD、について説明をしたいと思います。
1 MAにおける負債の影響
対象企業は金融機関からの借入があることがほとんどです。中には、後継者がいない会社では、実質的には経営者の候補者がいないというよりは、金融機関からの借入金債務について個人で連帯保証人になる者がいない、という事例は少なくありません。
また、後継者に引き継ぎたいが、代表者が担保に入れている自宅不動産について、現状では担保を外せません、ということで、安心して引退が出来ない、という場合もあります。
事業承継において、負債、担保の扱いは極めて重要な要素となります。
2 負債、資金に関するDDについて
(1)売手からの検討
売り手としては、負債を承継してくれるのか、個人保証、個人資産に対する担保を外してくれるのか、という点は重要です。
会社を売却した、事業を譲渡したとなっても、自宅に担保が設定されたままであれば、何のために売却をしたのか、ということになりかねません。
そうであれば、MA時に一切の債務について、負債を完済してもらえるのか、あるいは買い手側の保証による借り換えを行ってもらえるのか、といった点について、十分に銀行と協議をしておくことが必要になります。
銀行についても、買手が取引のある金融機関から資金手当てをするのか、従前の取引銀行にするのか、という点を検討しておく必要があります。
(2)買手からの検討
買手としては、会社を評価する場合に、その資金繰りについて、売り手の会社がどの程度の利率で、毎月いくらを返済しているか確認をし、自社であれば、同様の条件を維持できるのか、場合によっては有利な条件で借り換えることができるか、ということを検討しなければいけません。
また、既に資金繰りに窮している場合には、MAによって資金を投入することで支払い遅延を回避する必要に迫られている場合もあります。要は資金繰りに重大な問題を抱えている会社の場合もあります。
この場合、MAの判断に要する時間をどの程度かけることが出来るのか、いつまでに資金を投入しなければならないのか、という点を検討しなければなりません。
検討が間に合わない場合に、対象会社がどのような状況になるのか、期限の利益を喪失してしまうのか、売り手の代表者が資金提供できるのか、銀行とのリスケができるのかといった点を確認しなければなりません。
その他、代表者、代表者の親族が借主、貸主となっている債権債務について、どのような調整をするのか検討をしておく必要があります。
(3)表明保証条項の検討
その他、簿外債務の問題があります。これについては改めて検討をしたいと思いますが、負債がDDで判明したもの以外には存在しないことを売手に表明保証させることは必須になります。
次回はさらにMAの際のDDについて検討をしたいと思います。
以上
本説明は本原稿掲載日(令和3年10月)時点の情報により記載され、適切に更新されていない可能性がありますので、ご注意下さい。
回答者 弁護士 小川 剛
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