弁護士の視点で

                     前へ<<               >>次へ
福岡!企業!元気!のための法律ワンポイント 《令和3年12月号》
M&Aについて 法務DD(簿外債務・紛争リスク)について

今回は、法務DDの中でも簿外債務の存在、紛争リスクについて説明をしたいと思います。

1 MAにおける簿外債務の影響
DDを実施しても、その際には発覚しなかった負債が後に顕在化することがあります。
例えば、M&A後に、全く予期しない未払い賃金の請求を受けたが、未払い賃金の対象期間はM&Aの前だった、というような場合です。
あるいは、取引先との取引債権として計上していたが、架空の債権だった、というようなこともありえます。
これらは、帳簿上に正確に記載されていた負債ではなく、簿外債務ということになります。
まずは、これら簿外債務は会社の価値を大きく見誤らせるものであり、簿外債務をいかに無いようにチェックをするか、という点は重要です。

2 簿外債務の対応
簿外債務について、売主に存在しないことを保証させることが一般的です。
例えば、簿外債務について〇万円以上の債務が認められた場合には、売主が負担するという条項を設ける等の制度設計が考えられます。

3 訴訟等、紛争リスク
簿外債務とは限りませんが、紛争リスクを調査する必要があります。
わかりやすい紛争は裁判です。裁判中の案件がないか、その裁判は損害賠償なのか、会社の存続、事業の本質に影響を与えるようなものではないか。訴訟には至っていないが、内容証明郵便が届いていないか、顧客のクレーム対応の状況はどうか、最近では、コンプライアンス窓口に匿名通報が届いていないのか、といった点を確認する必要があります。
紛争については、訴訟のようにわかりやすい場合には、相手の請求が200万円であるが、会社は専門家費用を含めて100万円を超えることはないと判断している場合に、対応費用100万円を超える場合には売主が負担するといった評価をすること等が考えられます。
また、是正コストを要する場合には、是正コストをDDで算定するという方法もあります。
その他、保険で対応できるのであれば、保険料の負担が増額する金額をあらかじめ算定することでコスト算定をするという方法もあり得ます。
紛争については対応中のものについて債務として計上していないことが多いので、簿外債務となりやすいです。
DDの際には、丁寧に確認する必要がありそうです。
   次回はさらにMAの際のDDについて検討をしたいと思います。

                                                 以上
本説明は本原稿掲載日(令和3年11月)時点の情報により記載され、適切に更新されていない可能性がありますので、ご注意下さい。

回答者 弁護士 小川 剛
小川・橘法律事務所
810-0041福岡市中央区大名2-4-22新日本ビル8F
電話092-771-1200 FAX 092-771-1233
HP  http://t-o-law.com/
                     前へ<<               >>次へ
弁護士の視点でリストに戻る