1 概要
メーカーであるA社は、独自の商品開発を行っており、関連技術の特許の取得もしていました。
一定の市場性が見込めるものの、小規模な会社であり、商品開発時の投資について借入金額が膨大になっていました。このため資金繰りに窮するようになり、スポンサーであり、取引先に事業の承継を求めることとなりました。
そこで、取引先は会社を丸ごと引き受ける場合のコスト評価をするということで、DDの依頼がありました。
このように簿外債務、会社の正常化コストがどの程度となるのかというDDの依頼は少なからずあります。
もちろん、このような財務面に関するDDは税理士、会計士が実施することが多いですし、不可欠となりますが、根本的な事業リスクについて調査をすることがあります。
2 特許の評価
A社は特許を取得していますが、この技術が商品と関連しているのかどうかという点、他社に権利譲渡をしていないのかという点を検討しました。
A社代表者からの聞き取りが前提になりますが、個人からの借入について、担保提供を求められていることが分かりました。
仮に、この特許だけの売却ができるのか、あるいは特許を売却した場合でもA社商品の製造が続けられるのか検討しています。
3 販売代理店契約の扱い
A社は自社商品を販売する際に、販売代理店との契約をしていました。契約時には加入金を受領しており、契約書上、一定期間内にA社の事情で販売を終了する場合には、加入金を返金することが記載されていました。
今後、取引先がA社を支配する場合には、販路を変更したいのであれば販売代理店契約の整理のためのコストが必要であることが判明しました。
4 労務コスト
A社は賃金の遅配もあり、残業代の計算もしていないことから、相当な未払い額が存在することが明らかになりました。
5 全体評価
このA社のDDでは、買収先として不適切とは判断してはいませんが、正常化、希望する事業体制を整えるには、上記のコストを計上する必要があることを結論としました。
なお、当事務所でのDDの費用は、2週間で60~80万円程度を要しております。
本説明は本原稿掲載日(令和4年4月))時点の情報により記載され、適切に更新されていない可能性がありますので、ご注意下さい。
回答者 弁護士 小川 剛
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