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福岡!企業!元気!のための法律ワンポイント 《令和4年12月号》
M&Aについて サイト売買のご紹介3

9月号以降、サイト上でのサイト売買について紹介させていただきました。
今回は、契約書がどのように作成されるのか、ご案内したいと思います。

1 ひな形の活用
サイト売買の契約書に限らず、多くの契約書は作成の際に雛形を用いることになります。その上で、その案件に応じて、カスタマイズ、オーダーメイドで契約を作成することになります。
完全にゼロから作成するような特殊な契約もありますが、そのような事案であれば、サイト上でサイトの売買をするということにはなじまないものとなります。
サイト売買で売買されるサイトは、ある程度、類型化されているので、ひな形の活用が有効となります。
その上で、売買されるサイトに応じて契約書を作成することになります。

2 個別項目の調整、入力
案件ごとに異なる条件として、例えば以下があります。

 @ 譲渡対象財産
サイトを譲渡する際には何を譲渡対象とするのかは、案件により異なります。
一般的には、コンテンツ、構成ファイル、データ、著作権といった内容になりますが、さらに通販サイトでしたら在庫、情報系のアフィリエイトサイトであれば今後の原稿、データ等を対象とすることもあります。
また、債権債務についても考慮したいところです。収益サイトであれば、売掛金が発生しています。売掛金はいつまでの分を売側が受領するのか、基準日を設ける等の必要があります。一般的には譲渡日を基準とすることが多いですが、入金日を基準とすることもあります。
一方、債務が発生している場合もあります。サーバーに関する費用、外注先に支払う費用について、負担をどちらが行うのか定めておく必要があります。一般には上記の債権と同じタイミングを基準とすることが多いのではないかと思われます。

 A 検収の期間、引継ぎの期間
サイトを譲渡し、そのサイトの売買に問題がないとして検収完了とするための期間、サイトの運営について助言を求めることができる期間を設定することがあります。
この検収期間については1週間程度とすることが多いように思われます。
サイトの運営について助言を求める場合には、1か月程度の設定が多く、この間に必要な引継ぎがなされることになります。

 B 競業禁止
サイトの売主は、おそらく簡単に同種サイトを作成することができます。このため売主について、同種営業を行わないという特約を入れることが多々あります。
裁判例、法解釈では経済活動の自由から競業禁止については、極めて限定的に、例えば地域、期間、対価の有無といった点で制限をされる傾向にあります。
しかしながら、サイト運営については、地域性は問題とできませんし、事業を譲渡しながら競業を認めてはサイト購入の意味がなくなりますので、期間を1年といった合理的なものとし、対象を競業するサイトとして制限するといったことで合意をすることになります。

 Cその他
例えば、外注先のライターの引継ぎが出来るといった条件を付すこともあります。

このような点について、カスタマイズすることで、ほぼ自動で契約書の作成が可能ですし、特約についてのみオリジナルで作成すれば足りることになりそうです。実際には自動化している部分は、売主がチェックボックス等への入力をすることで契約書は作成できますので、サイト上でのサイト売買も専門家の関与を減らし契約が成立しているところです。  

                                                   以上    

本説明は本原稿掲載日(令和4年11月)時点の情報により記載され、適切に更新されていない可能性がありますので、ご注意下さい。

回答者 弁護士 小川 剛
小川・橘法律事務所
810-0041福岡市中央区大名2-4-22新日本ビル8F
電話092-771-1200 FAX 092-771-1233
HP  http://t-o-law.com/
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