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福岡!企業!元気!のための法律ワンポイント 《令和5年5月号》
M&Aについて DD事例のご紹介について1

昨年9月号以降、サイト上でのサイト売買について紹介させていただきましたが、今回は後継者不在による事業承継に関するDD(デューデリジェンス)事例についてご紹介させていただきます。

1 後継者不在事案のDD
後継者不在を起因とするM&Aはニーズが大きいとされています。実際のM&Aの場面でも、その多くが創業者のリタイアに伴う事業承継を起因とする事例です。
少子高齢化といわれる社会で、あらゆる業種が人手不足の状況です。経営者についても誰でもいいということではなく、経営をしたいという人材が社会には企業の数よりも少ないのかもしれません。

2 後継者不在の理由
後継者がいない理由は様々です。私が関与するのは中小企業ですので、通常は親族承継、従業員承継を考えます。これができないのは、概ね次のような事情によります。 親族承継について
・子(親族)がいない
・子(親族)は大企業に就職している
・子(親族)は事業に関心がない
従業員承継について
・経営者になる適性がある従業員がいない
・従業員が拒否をする
・経営者保証を望まない
このような会社について、財務面が優良な企業であれば、銀行が役員を出向させるというケースもあります。しかし、銀行が人材を送り込んでくれるような会社は限られています。

3 後継者不在に関するDD
DDを実施する場合には、なぜ会社を売却することを決意したのか、という点に加えて、なぜ後継者がいないのか、という事情を調査することになります。
前項の親族がいない、従業員の候補者がいないというのはわかりやすいように思いますが、なぜ親族に承継する者がいないのか、なぜ従業員が育っていないのか、という点を探ると、よりリアルな事情が判明することがあります。
端的には、親族も従業員も会社に魅力を感じていない、経済的なメリットがないという可能性があります。例えば、代表者が現場で働いて、その年収が200万円、負債が1億円というような場合には、親族や従業員も引き継ぎたいとは思わないでしょう。
数字が思っている以上に悪いという可能性があります。
数字が悪いということであれば、それは買い手にとっては、想定できる内容ですので問題はありません。
一方、数字が悪くないように見える会社なのに、誰も後継者になりたがらないという場合こそ、慎重な調査が必要です。
DD段階で従業員からの事情聴取は制限されますが、何らかの要因が潜んでいる可能性があります。数少ない接触できる従業員から事情を聴くことが重要になり、人間関係の問題が指摘される場合、あるいは事業の闇のような話があるなど、場合によってはM&Aの中止理由が浮上する可能性もありえます。
なぜ売りに出ているのか、という点が合理的な説明ができないM&Aということがないように、DDをする必要があります。
具体的なDDのご相談は、小川・橘法律事務所にお気軽にご相談ください。

                                                 以上    

本説明は本原稿掲載日(令和5年4月)時点の情報により記載され、適切に更新されていない可能性がありますので、ご注意下さい。

回答者 弁護士 小川 剛
小川・橘法律事務所
810-0041福岡市中央区大名2-4-22新日本ビル8F
電話092-771-1200 FAX 092-771-1233
HP  http://t-o-law.com/
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