先日、M&Aで売却側の従業員説明をしてほしいという要望を受けました。そもそも、どのようなタイミングで従業員への説明をすべきでしょうか?
1 従業員への説明のタイミングについて
M&Aによって経営者が変更になるわけですから、従業員にとっては大きな問題となります。タイミングによっては、従業員の不安をあおることになりかねませんし、大量退職につながることもありえます。
M&A前の成立前に想定外の騒動が起きてしまう可能性を考えると、既に決まったこととして伝えるほうがスムーズな可能性もあります。また、早く伝えることで、よからぬ風評被害が生じることも考えられます。
一方、買い手としては、従業員に事前に説明をした上で購入をしたいところであり、できるだけ早く説明をして、問題なく受け入れられることを確認したいというニーズがあります。
実際に、私が経験をした例でも従業員説明については、ケースバイケースで、説明のタイミングは様々です。
コアになる従業員だけ事前に説明をしている場合、さらに購入希望者との面談まで実施している例もあります。
一方、比較的規模の大きい会社の場合には、決定後までごく一部の従業員しか把握していないということが多いです。
これは、小規模な会社ほど、仕事が人についており、特定の従業員の意向の影響が大きく、従業員が揃っていることがM&Aの前提になるという場合もあります。このため、退職の意向がないこと等をDDの段階でチェックすることも見受けられます。もちろん、このような場合には、売主側企業の承諾が前提となります。
結論として、正しいタイミングというものはありませんが、小規模な事業者の場合には、M&A成立後では「聞いてなかった」というリスクが生じる可能性もありますので、事前の従業員根回しは必要だと思われます。
2 従業員に何を説明すべきか
従業員についての説明内容についてもケースバイケースです。ただ、従業員は労働条件の変更、リストラを気にすることになります。
このため、従業員の権利について説明をする必要があります。基本的にM&Aによって経営者が変更になっても雇用契約が不利益に変更できるわけではありませんので、従業員には適切に説明をする必要があります。私が説明に同席してほしいというのは、このあたりの安心を示したいからだと思います。
また、なぜ経営者を変更しなければならないのか、という点についても説明は必要だと思います。経営不振だから、という理由を説明するのであれば、従業員は不安に思うでしょうから、適切な説明をしていただく必要がありそうです。
以上
本説明は本原稿掲載日(令和5年11月)時点の情報により記載され、適切に更新されていない可能性がありますので、ご注意下さい。
回答者 弁護士 小川 剛
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