弁護士の視点で

                     前へ<<               >>次へ
福岡!企業!元気!のための法律ワンポイント 《令和6年4月号》
カスタマーハラスメント対策入門

先月まで45回にわたり、M&Aについて説明をしてきました。ややネタも尽きてきましたので、今月から1年を目途に、カスタマーハラスメント等のハラスメント対応について検討していきたいと思います。お付き合いのほど、どうぞよろしくお願いいたします。

Q 私はスーパーを数店舗経営している会社の総務担当です。カスタマーハラスメント対策をするようにと言われていますが、何から手をつければいいでしょうか?

1 カスハラとは?
カスタマーハラスメント(以下、略して「カスハラ」といいます)が社会問題になっています。かつては「お客様は神様」と言っていたところが、客の過剰な要求について度が過ぎている、それがサービス提供者の過度な負担になっているというものです。
具体的な例としては、些細なミスがあっただけにもかかわらず、店長に土下座謝罪を強要し、さらにその動画をネットで配信するといった刑事事件になるような事例も発生しています。あるいは、長時間のクレームの電話、担当者を罵倒するような連日の電話がコールセンターにかかってくるなど、頻繁に様々な事例が報道されています。
このような顧客の態度について、「もはや客ではない」「会社は毅然とした対応をすべき」という声は大きくなっています。

2 企業に求められるカスハラ対応
会社のカスハラ対応といえば、いかに顧客対応をするか、場合によっては長時間の話を聞き、マニュアル通りに対応をし、さらにエスカレートをするようであれば弁護士、警察に相談をするということが一般的だと思います。
現在は、さらにこの視点に加えて、カスハラ対応をする従業員へのフォローまで求められています。カスハラ問題については国も問題認識があり、「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」が厚労省から出されています。これはカスハラ対応について一通り書かれていますので、企業の担当者であれば、是非、ご一読いただきたいと思います。
これがなぜ厚労省が出しているかというと、前述のとおり、視点がカスハラ対応をする従業員についてフォローする必要があり、仮にカスハラ対応に起因し当該従業員が精神疾患となった場合に、それが心理的負荷が強いとして労災の対象となる、あるいは従業員に対する雇用契約上の安全配慮義務違反として企業が賠償義務を負う可能性があるとされています。
企業は、カスハラ対応について、当該顧客に対応しながら、対応する従業員の対応までしなければならないのです。
この「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」については、今後も改めて取り上げたいと思いますが、企業の担当者がすべきこととして、このマニュアルを読む、ということをお勧めしたいと思います。

具体的な対応はまた次回以降に検討しましょう。

                                                 以上    

本説明は本原稿掲載日(令和6年3月)時点の情報により記載され、適切に更新されていない可能性がありますので、ご注意下さい。

回答者 弁護士 小川 剛
小川・橘法律事務所
810-0041福岡市中央区大名2-4-22新日本ビル8F
電話092-771-1200 FAX 092-771-1233
HP  http://t-o-law.com/
                     前へ<<               >>次へ
弁護士の視点でリストに戻る