先月まで45回にわたり、M&Aについて説明をしてきました。ややネタも尽きてきましたので、今月から1年を目途に、カスタマーハラスメント等のハラスメント対応について検討していきたいと思います。お付き合いのほど、どうぞよろしくお願いいたします。
1 カスタマーハラスメントの発生状況
厚労省による「カスタマーハラスメント対策マニュアル」(以下、「マニュアル」)によれば、カスタマーハラスメントについては、減少していると回答する企業よりも増加していると回答する企業のほうが多いということです。
これは何となく理解できます。「不適切にもほどがある」ではありませんが、セクハラ、パワハラの基準は随分と変化してきており、かつて許容されたことも今では許容されないようになっていますし、セクハラ、パワハラということは社会に浸透しているので、随分とこのようなことがないように注意も進んでいることが背景にあるように思います。
しかしながら、カスハラについては、増加しているのが実態のようです。ネットニュース等では、カスハラの実態について報道がなされる機会も増え、あるいは、自らがカスハラとなるような土下座強要動画を撮影し、SNSで拡散させるなど、信じがたい状況となっています。
社会全体で権利意識が高まることは理解できますし、怒りを感じるようなことも多々あるかとは思います。しかし、そこまで怒らないといけないのか、という事案は少なくありません。
また、ネット社会においては、例えば、不倫をしたタレントをCM起用している会社に電話をかけクレームを言う、あるいは、商品の不具合のニュースが流れると、その商品を購入していなくてもクレームを入れるという方がいるようです。
私見ですが、社会全体が非常に厳しい視線を持っている社会となっていることも、カスハラといわれる態度をとる方に正当性を与えているような気がします。さらに私見ですが、社会全体は、より寛容になっていただいたいと思うところです。
同マニュアルによれば、カスハラで多い類型としては、長時間の拘束や同じ内容を繰り返すクレーム(過度なもの)が最も多く、次いで、「名誉棄損・侮辱・ひどい暴言」が続いているようです。
次回以降は、同マニュアルでカスハラがどのように定義されているのか、確認したいと思います。
以上
本説明は本原稿掲載日(令和6年4月)時点の情報により記載され、適切に更新されていない可能性がありますので、ご注意下さい。
回答者 弁護士 小川 剛
|