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福岡!企業!元気!のための法律ワンポイント 《令和6年8月号》
カスタマーハラスメント対策入門5

カスタマーハラスメントの例

1 顧客の行為
 厚労省のマニュアル9頁には、企業が対応に困った類型として、多数の行為類型が掲載されていますので、いくつか紹介します。
@時間拘束型
 一時間を超える長時間の拘束、居座り、長時間の電話

これはあくまでも企業が問題があると捉えている目安であって、これについても明確な基準があるわけではありません。1時間以内であればカスハラに該当しない、あるいは1時間を超えたからカスハラというわけではないと考えます。
私が企業に代わり顧客と対応する場合にも1時間を超えて話を聞くべき場合もあります。相互の言い分を説明する場面、交渉のような要素が入ると2時間を要する場合もあるかもしれません。ただ、電話での話で1時間を超えると、コミュニケーションとしての限界があるように思われます。あるいは、同じ質問を繰り返す、応じられない要望を重ねるといった行為がなされると、30分でもカスハラというべき場合があるかと思います。
なお、私が聞いた一番の長電話は17時から23時まで6時間も説教をされたということでしたが、これは明らかに異常です。電話を受けた方は、心身ともに疲弊してしまいました。

ASNSへの投稿
SNSへの投稿については、近時、大問題となっています。
匿名での書き込みについて、事実に反する場合もあり、また過剰な記載がなされる場合もあります。
例えば、私についても、googleMAPで☆1の低評価が一つついています。私の仕事内容から相手と対峙し、相手の嫌なことを言わなければなりません。このため、相手から低評価をつけられていることは避けられません。私の☆1の評価をしている方は、私の相手方だった事業者に☆5をつけていたので、間違いなくその関係者でしょう。
話がそれましたが、根拠もなく低評価をつける行為には正当性はなく、本来、カスハラというべきものです。
さらに、「SNSに書き込むぞ」というクレームを受けることもあります。これは難問です。「SNSに書き込まれたくなければ、示談をしろ」という話であれば、不当な要求というべきです。一方、事実に反しなければSNSへの書き込みが不当とは必ずしもいえない場合もありえます。名誉棄損や営業妨害に該当する場合もありえるでしょうが、サービス提供者側が悪質な場合には報道に代わり対応を求めることもありえるのかもしれません。ただし、基本的には妥当性を欠く行為になる可能性が高いですし、紛争の解決を困難とするものです。このような行為は避けられるべきです。

次回は改めてカスハラ対策の必要性を説明したいと思います。

                                            以上

本説明は本原稿掲載日(令和6年7月)時点の情報により記載され、適切に更新されていない可能性がありますので、ご注意下さい。

回答者 弁護士 小川 剛
小川・橘法律事務所
810-0041福岡市中央区大名2-4-22新日本ビル8F
電話092-771-1200 FAX 092-771-1233
HP  http://t-o-law.com/
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