弁護士の視点で

                     前へ<<               >>次へ
福岡!企業!元気!のための法律ワンポイント 《令和6年11月号》
カスタマーハラスメント対策入門8

カスタマーハラスメント対応の基本

 厚労省のマニュアル19頁には、「カスタマーハラスメントが実際に起こった際の対応」が整理されています(前号との続きとなります)。

 D事実関係の正確な確認と事案への対応
 E従業員への配慮の措置
 F再発防止のための取組
 G@〜Fまでの措置と併せて講ずべき措置

 この中で実際のカスハラ対応をする会社として関心があるのは、このDだと思います。
 もちろんEFGも大事でしょうが、対応の基本としては、Dの問題となります。

 事実確認を正確に把握さえできれば、その後の対応の方針の確定、カスハラかどうかの判断、会社が金銭的負担をする場合の妥当性も判断できます。
 事実確認ができないと解決は困難になります。
 中には、被害者と自称する方が、カスハラのトラブルの中で暴行を受けたと主張することがあります。このような場合に、警察はこのような案件を相手にはしないでしょうが、クレームが続くことは避けられません。
 もしかしたら本当に暴力を受けているかもしれませんし、全くの言いがかりかもしれません。
 この事実認定は、その後の対応方針を決める上で極めて重要です。
 事実認定の方法としては、当事者の聞き取りも重要ですが、やはり客観的な材料が欲しいところです。わかりやすく言えば、録音、録画の存在が極めて重要です。
 そのようなものがない場合には、目撃者の説明の合理性です。
 もっとも目撃者といっても、利害関係があるようであれば、当事者の証言と同じように慎重な考慮が必要となります。
 カスハラの対応では、被害者とされる方の供述が変遷する場合があります。このような変遷が思い違いのレベルなのか、本質的な部分が変化しているのかということを見極める必要があります。
 供述の信用性、見極めについてはなかなか判断が難しいところです。事実認定については、最終的には裁判所はどう認定すると思われるか、という発想で考える必要があります。そうすると、事実認定については、どうしても社内で完結するのは難しいのであって、弁護士等の第三者を関与させるしかないように思います。これが第三者委員会を立ち上げる目的ですし、概ね第三者委員会には弁護士が加入している理由だと思います。
 そうすると、事実認定できない場合には、直ちに弁護士を介入させることが重要だと考えます。

                                            以上

本説明は本原稿掲載日(令和6年10月)時点の情報により記載され、適切に更新されていない可能性がありますので、ご注意下さい。

回答者 弁護士 小川 剛
小川・橘法律事務所
810-0041福岡市中央区大名2-4-22新日本ビル8F
電話092-771-1200 FAX 092-771-1233
HP  http://t-o-law.com/
                     前へ<<               >>次へ
弁護士の視点でリストに戻る