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福岡!企業!元気!のための法律ワンポイント 《令和8年9月号》
カスタマーハラスメント対策入門30

カスハラに関する裁判例

 本日は、カスハラについて、従業員から安全配慮義務違反で会社が慰謝料を請求し、その請求が棄却された事案(横浜地裁川崎支部令和3年11月30日判決)を紹介します。

 当該事案は、NHKの委託先のコールセンターの従業員の事案です。当事者は地位確認請求を行っており、無期転換直後に定年を迎えた労働者への継続雇用拒否が有効とされた例として労働事件として評論がされている事件となります。
 当該事案は、従業員が勤務先に対し「要注意視聴者に対する刑事や民事上の法的措置をとることなどにより、要注意視聴者によるわいせつ発言や暴言等に触れさせないようにすべき安全配慮義務を怠り、これによって原告が精神的苦痛を受けたとして、雇用契約に基づく付随義務としての安全配慮義務違反に基づき損害賠償(慰謝料)100万円及び弁護士費用10万円並びに遅延損害金」の支払を求めています。
 当該事案において、裁判所は、以下のような事実を認定し、総合考慮すれば、被告について原告に対する安全配慮義務を怠ったと認めることはできない、として原告の請求を棄却しています。この事案で原告の考慮要素となった事情は以下のとおりです。
 ・5人のコミュニケーターに対して1人のCC又はCLを、10人のコミュニケーターに対して1人のSVをそれぞれ配置し、CC、CLやSVは、それぞれが担当するコミュニケーターの通話を順次モニタリングし、わいせつ電話はもとより、コミュニケーターの対応が困難になりそうな入電がないか常にチェックしていること
 ・コミュニケーターの心身の安全を確保するために、ルールを策定してコミュニケーターに周知し、わいせつ電話に対する対策として、コミュニケーターがわいせつ電話と判断した場合には転送指示を待たずに直ちにSVに転送することを認め、さらにその日における同一人物からの2回目以降のわいせつ電話に対しては、コミュニケーターの判断により即切断可能としていること
 ・仮に何らかの理由ですぐに転送ができない場合には、電話を保留やミュートにしてそのまま席を離れ、直接、SVやCCに転送の依頼をすることも可能としたこと、また視聴者が大声を出すような場合には、コミュニケーターにおいてヘッドセットを外したり、転送をしたりする対応を認めていること
 ・転送を受けたSVが当該視聴者に対し業務に支障があるから今後架電しないよう抗議したり、対応中のコミュニケーターの席まで行って電話を代わって注意したりすることも行っていたこと
 このように、視聴者のわいせつ発言や暴言、著しく不当な要求からコミュニケーターの心身の安全を確保するためのルールを策定した上、これに沿って上記のような対処をしていることが認められる。
 ・メンタルヘルス相談、提携カウンセリング機関で面接による無料のカウンセリング、ストレスチェックを実施しているといった事情

 このように、コールセンターといった顧客のフロントでの業務、かつ一定数の不適切な電話がなされる職場においても、その対応を適切にしていることにより、安全配慮義務違反は回避できるということは言えそうです。
 もっとも、当該事案は、原告の発言にもいかがなものかと思われるところがありますので、結論にはその影響があったのではないかという印象は否めないところです。

 次回はまた裁判例をチェックしたいと思います。

                                            以上

 本説明は本原稿掲載日(令和8年8月)時点の情報により記載され、適切に更新されていない可能性がありますので、ご注意下さい。

回答者 弁護士 小川 剛
小川・橘法律事務所
810-0041福岡市中央区大名2-4-22新日本ビル8F
電話092-771-1200 FAX 092-771-1233
HP  http://t-o-law.com/
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