1. 自己紹介
はじめまして、不動産鑑定士の佐々木哲です。業界大手の谷澤総合鑑定所に15年間在籍後に、福岡市中央区で佐々木不動産鑑定事務所を開業しました。
前職時代は、Jリート等の証券化評価を中心としていましたが、独立後は、郊外の田んぼの価格から都心の商業施設の家賃まで、幅広く鑑定を行っています。
本シリーズでは、不動産の基礎知識が少ない方を対象として、不動産と不動産鑑定に係るネタを書いていきたいと思います。
2.不動産鑑定の制度
不動産の鑑定評価とは、「不動産の鑑定評価に関する法律」で、「不動産の経済価値を判定し、その結果を価額に表示すること」とされています。つまり、不動産に値段をつけることが不動産鑑定です。不動産に値札は付いていませんので、不動産鑑定士がマーケットに代わって値段を付けることになりますが、好き勝手に付けて良い訳ではなく、「不動産鑑定評価基準」に則って評価することになります。
3.不動産鑑定の対象
鑑定評価の対象は、「不動産鑑定評価基準」に明記されており、民法上の不動産だけではなく、民法以外の法律で不動産とみなされる「工場財団」等も評価対象になります。
不動産を評価上分類すると、宅地(更地、建付地、借地権、底地、区分地上権)、宅地見込地、建物及びその敷地、建物(借家権含む)等に分類されます。なお、「評価」とは、価格を求めるだけではなく、賃料を求めることも含まれ、賃料評価の依頼も案件としては多いです。
4.不動産鑑定士の業界
不動産鑑定士の知り合いがいるという方は少ないと思いますので、鑑定業界をご紹介しますと、不動産鑑定士の登録人数は全国で9,543人(福岡県:267人)、同様に不動産鑑定業者は3,224業者(福岡県:110業者)となっています(令和2年1月時点)。
不動産鑑定士の中には金融機関、不動産投資会社、公的機関に勤めている方も一定数いることを踏まえると、実際に鑑定業務を行っている不動産鑑定士は前記の数字以上に少なくなり、資格業界の中ではレアキャラになります。
不動産鑑定事務所の営業形態としては、不動産鑑定士1〜3人程度の個人事務所が大半を占め、私の事務所もこれに該当します。一方、監査法人の三大事務所に該当するようなビッグ3と呼ばれる大手事務所が鑑定業界にも有り、主要都市に展開しています。
5.不動産鑑定の依頼先
不動産鑑定士は何で飯を食ってますか?という質問がよく有りますが、不動産鑑定士は国土交通省の管轄資格ということもあり、大半の鑑定事務所は、国などの公共機関からの仕事に頼っています。地価公示や公共用地買収のための「更地」の評価が代表的な仕事です。しかしながら、大手事務所は、民間企業が発注する不動産証券化業務を中心としており、「貸家及びその敷地」の評価を大量に行っています。従って、仕事内容で分類すると、鑑定業界は二極化していると言えます。
6.最後に
今月は不動産鑑定士の仕事の紹介に留まりましたが、次回以降は具体的な内容を説明したいと思います。
回答者 不動産鑑定士 佐々木 哲
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