不動産鑑定士の仕事

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福岡!企業!元気!のための法律ワンポイント 《令和3年3月号》
様々な不動産の評価額

1. はじめに 不動産の評価額には、地価公示価格、固定資産税評価額、相続税路線価等の公的な評価額のほかに、不動産鑑定士の評価や不動産業者による査定書等も有り、一般の方にはよく分かりづらいと思いますので、今月は、各種の評価額を整理してみたいと思います。

2.土地の公的評価額 <各種の公的評価額>

  @地価公示価格A地価調査価格B相続税路線価C固定資産税評価額
実施機関国土交通省都道府県国税局各市町村
評価目的取引の指標等国土法の価格審査等課税課税
価格時点1月1日7月1日1月1日1月1日
地価公示価格水準
に対する割合
100%100%80%70%
 土地の公的評価額としては、まず@地価公示価格が挙げられます。地価公示法に基づき全国の不動産鑑定士が評価し、実勢の相場を踏まえて査定します。
 A地価調査は、地価公示に類似していますが、価格時点が7月1日時点であることや都市計画区域外の地域も対象にしているという特徴が有ります。
 B相続税路線価は、相続税額や贈与税額の算定の基礎となる価格で、地価公示水準額に対して80%程度の水準で路線価が付されています。国税庁のホームぺージで公開されているため、取引価格の目安として利用される方も多いと思います。
 C固定資産税評価額は、固定資産の所有者に対して固定資産税等を課税するための価格で、地価公示水準額の70%程度になっています。
 以上の通り土地価格の指標となる公的な評価額は4種類有りますが、建物が存在しない「更地」の評価額になっている点に注意が必要です。
 つまり、「更地」の価格を知りたい場合は、上記の公的な評価額は参考になりますが、建物が建っている土地の場合は、話が違ってきます。
 例えば、賃貸マンションの敷地は、「更地」ではなく「建付地」に分類されますので、原則として、建物の存在を前提として土地価格を求める必要が有ります。具体的には、賃貸マンションの一棟の価格を収益ベースで求め、その内訳として土地価格を把握することになります。

3.不動産鑑定評価と不動産業者の査定書

  不動産鑑定士による鑑定評価不動産業者による査定書
評価主体不動産鑑定士 ー 
根拠法不動産の鑑定評価に関する法律 ー 
評価基準不動産鑑定評価基準 ー 
求める価格原則として正常価格不動産の売り出し価格等
 不動産の評価は、「不動産の鑑定評価に関する法律」により、不動産鑑定士の独占業務とされているため、不動産鑑定士以外は、不動産の評価を行ってはならないことになっています。
 ここでは、両者の内容の違いに着目すると、不動産鑑定士の鑑定評価は、鑑定評価基準に則っていますので、周辺の相場だけではなく最有効使用の判定や投資コスト・収益性の検討等の多面的な分析が行われ、説明力の観点から大きな差が有ります。

4.最後に
 今月は様々な不動産の評価額を整理しましたが、次回は評価手法の話をしたいと思います。

回答者 不動産鑑定士 佐々木 哲
佐々木不動産鑑定事務所
不動産鑑定士 佐々木 哲
〒810-0004 福岡市中央区渡辺通2-6-20 ラクレイス薬院203
TEL092-791-1873 FAX092-791-1893
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