1. はじめに
不動産鑑定を頻繁に依頼する方は、一部の企業を除くと少数だと思います。そこで、今月と来月は不動産鑑定を依頼する場合の注意点を説明します。
2.鑑定評価書VS調査報告書
不動産鑑定を依頼する場合、最初に成果品の種類を「鑑定評価書」or「調査報告書」のどちらかを選択する必要が有ります。
両者の違いは、不動産鑑定評価基準に則っているか否かですが、1箇所でも則っていない場合は、「調査報告書」となります。
「調査報告書」は、意見書、簡易評価書とも言われ、鑑定費用を低く抑えられるため、依頼されるケースも多いです。しかしながら、注意点としては、@「調査報告書」は原則として内部利用に限定されること、A訴訟目的の場合等は、鑑定の結果が当事者に大きな影響を与えるので、「調査報告書」では対応できないことになっています。
「調査報告書」は、鑑定評価のルールに基づかないフリースタイルの評価になっていますので、その特性を理解した上で依頼する必要が有ります。
3.依頼内容の確定
依頼の際には、以下の内容を打合せの上で確定します。実務上は、「価格等調査業務依頼書兼承諾書」及び「業務の目的と範囲等の確定に係る確認書」を取り交わしています。
| 依頼内容 | 備 考 |
@ | 依頼目的 | 「資産評価のため」、「相続財産の評価のため」等 |
A | 類型 | 「更地」、「建付地」、「貸家及びその敷地」等 |
B | 権利の種類 | 「所有権」、「賃借権」等 |
C | 評価の条件 | 現況を所与として評価しますが、例外的に現況と異なる 評価条件を設定して評価を行う場合も有ります。 |
D | 価格時点 | 価格を判定した基準となる日で、将来の時点を設定する ことは原則として認められていません。 |
E | 価格の種類 | 原則として正常価格 |
F | 所在・地番等 | 評価対象不動産を確定します。 |
4.最後に
今月は鑑定評価書と調査報告書の違い等を説明しましたが、次回は鑑定評価に必要な資料等を説明したいと思います。
回答者 不動産鑑定士 佐々木 哲
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