1. はじめに
今回は不動産鑑定を依頼する場合の注意点として、鑑定事務所の選び方や評価に必要な資料について説明します。
2.鑑定事務所の選び方
鑑定事務所は、全国大手事務所とそれ以外の事務所の大きく二つに分かれます。
不動産鑑定業は、情報産業の性格を有するので、事務所の規模が大きいほど情報やノウハウの蓄積に有利です。現に、全国大手事務所は圧倒的なノウハウを持っており、不動産証券化や継続賃料等の難易度の高い案件にも対応しています。しかしながら、これらの事務所は大企業を顧客とするため、鑑定費用も高くなる傾向が有ります。
従って、鑑定費用の面から大手事務所以外の事務所を選択することが一般的と思いますが、中小規模の事務所は能力格差が大きく、どの事務所を選択するかで結果が異なるケースも多いです。
他の業界の方が鑑定事務所の能力を推し量ることは困難ですので、大手事務所で経験を積んだ不動産鑑定士かどうかの経歴を確認することや他の士業(税理士、弁護士等)から紹介してもらう等が良いと思います。
3.鑑定評価に必要な資料
鑑定評価に必要な資料は、対象不動産の種類や依頼目的によって異なりますが、一般的には以下に列挙したような資料が必要です。資料が不足する場合であっても鑑定評価を行うことは可能ですが、評価額の精度に影響を及ぼしますので、可能な限り資料をご用意された方が良いと思います。
| 必 要 資 料 | 備 考 |
@ | 位置図・所在図 | 物件の所在地を確認するため |
A | 登記事項証明書 | 所有者・数量等の確認のため |
B | 公図・実測図 | 土地の数量・形状・境界等の確認のため |
C | 借地契約書 | 借地契約の内容・地代等の確認のため |
D | 建物設計図書 | 建物の面積・階数・構造等の確認のため |
E | 管理規約 | 原則として正常価格 |
F | レントロール | 収入額等を把握するため |
G | 賃貸借契約書 | 賃料・賃貸面積・一時金・契約期間の把握のため |
H | 損益計算書・収支表 | 賃貸経営に係る収支を把握するため |
I | 公租公課 | 賃貸経営に係る支出額を把握するため |
4.最後に
今月は鑑定事務所の選び方等を説明しましたが、次回は鑑定評価の依頼から完了までの流れを説明したいと思います。
回答者 不動産鑑定士 佐々木 哲
|