不動産鑑定士の仕事

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福岡!企業!元気!のための法律ワンポイント 《令和3年9月号》
不動産証券化A

1. はじめに
不動産証券化には多数のプレイヤーが係るため、各プレイヤーの役割をご説明します。

2.オリジネーター
証券化の対象となる不動産を元々所有していた者をオリジネーターといいます。オリジネーターは、所有不動産をSPC等の器に譲渡し、売却代金を得ます。

3.投資家
企業が資金調達をする手段は、負債か、資本に分かれます。不動産ファンドにおいても、資金調達方法は同じで、借入等のことを「デット」、資本のことを「エクイティ」といいます。投資家の種類もデット投資家とエクイティ投資家に分かれます。


SPC

4.レンダー
投資家のうち、融資を提供する金融機関をレンダーといいます。不動産証券化のローンは、返済に対する責任範囲が限定されるノンリコースローンとして貸付られることが一般的です。

5.アレンジャー
不動産証券化の仕組みを作り、多数のプレイヤー(オリジネーター、レンダー、信託銀行、AM、PM)の取りまとめを行うのがアレンジャーです。

6.アセットマネージャー(AM)
不動産証券化におけるSPC等は単なる器に過ぎないので、頭脳部分が必要となります。そこで、投資家等は、不動産の運用・管理・運営等のアセットマネジメント業務をアセットマネージャーに委託します。
アセットマネージャーは、不動産の取得、借入の実施、テナント誘致、プロパティマネジメント業者の選定、不動産の売却等を担い、投資価値の最大化を目指します。
なお、実務上は、テナント誘致業務や建物管理業務は、プロパティマネージャーが行うことが多いです。

7.プロパティマネージャー(PM)
不動産の所有者やAMからの依頼により不動産の運営・管理業務等のプロパティマネジメント業務を行う者をプロパティマネージャーといいます。
具体的には、@清掃・設備管理・防犯等の建物管理業務(BM:ビルメンテナンス)、Aテナント募集等のリーシング業務、B大規模修繕計画の立案等のコンストラクションマネジメント業務、C入居テナントからの入金確認を行う資金管理業務、D各業務を所有者等へ報告するためのPMレポート作成業務等を行います。

8.不動産鑑定士
「資産の流動化に関する法律(資産流動化法)」や「投資信託及び投資法人に関する法律(投信法)」等の規定により、証券化対象不動産について、不動産鑑定士による鑑定評価が義務付けられています。
また、鑑定サイドでも、平成19年に不動産鑑定評価基準を改正して証券化対象不動産を評価する際のルールを作成し、適正な評価を行う体制を整えています。

9.最後に
次回も引き続き不動産証券化について説明します。

回答者 不動産鑑定士 佐々木 哲
佐々木不動産鑑定事務所
不動産鑑定士 佐々木 哲
〒810-0004 福岡市中央区渡辺通2-6-20 ラクレイス薬院203
TEL092-791-1873 FAX092-791-1893
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