不動産鑑定士の仕事

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福岡!企業!元気!のための法律ワンポイント 《令和3年10月号》
不動産証券化B

1. はじめに
前回は不動産証券化のプレイヤーについて説明しましたが、今回は不動産証券化のスキームを理解するために必要な仕組みをご紹介します。

2.倒産隔離
不動産の証券化では、倒産隔離という概念は非常に重要です。倒産隔離とは、オリジネーター(不動産の原所有者者)等が倒産してもSPCがその影響を受けないという投資家保護の仕組みのことです。倒産隔離の仕組みが構築されると不動産以外のことで収益が減少するリスクが小さくなるため、不動産自体の収益力に着目して投資を行うことが出来るようになります。
例えば、オリジネーターが倒産して証券化不動産が差し押さえられるような事態に陥ると投資家やレンダーには多大な損害が生じます。従って、投資を幅広く集めるためには、オリジネーターの倒産リスクから切り離す必要が有ります。


SPC

3.二重課税の回避
不動産証券化における二重課税とは、不動産を所有するSPCや投資法人の段階で課税され、更に投資家への配当に対して課税されることです。二重課税が行われると不動産投資のリターンが減少してしまい、証券化ビジネスの魅力がなくなってしまいます。不動産証券化市場の拡大のため、一定の要件を満たす場合は、二重課税の回避措置が取られています。
Jリートでは、投資法人は原則として課税されますが、配当可能所得の90%超を配当するなどの要件を満たす場合は、配当の損金処理が可能になります。実務上も大半のJリートは、配当可能所得の90%超を配当しています。


Jリートの場合

4.優先・劣後構造
証券化対象となった不動産を、リスク・リターンが高い部分と低い部分を人為的に分ける仕組みを優先・劣後構造と呼びます。
優先部分を保有している投資家は、優先的に元本や金利の返済を受け、一定額までは損失の影響を受けることは有りません。一方、劣後部分の投資家は、対象不動産に損失が生じると、最初に元本や金利の支払いが停止されます。
このように劣後部分を設けることで優先部分の元本や金利の確実性が高まるので、優先部分は相対的にローリスク・ローリターンの商品として投資を呼び込むことが可能になります。


SPC(合同会社)

5.最後に
次回も引き続き不動産証券化について説明します。

回答者 不動産鑑定士 佐々木 哲
佐々木不動産鑑定事務所
不動産鑑定士 佐々木 哲
〒810-0004 福岡市中央区渡辺通2-6-20 ラクレイス薬院203
TEL092-791-1873 FAX092-791-1893
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