不動産鑑定士の仕事

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福岡!企業!元気!のための法律ワンポイント 《令和4年5月号》
賃料評価の基礎知識@

1.はじめに
不動産鑑定士は、価格の評価だけではなく賃料の評価も行うことは意外と知られていません。ただし、賃料の評価については、鑑定士によって得手不得手が大きく分かれる分野となっていますので、本稿では賃料の評価が難しい事情を紹介したいと思います。

2.賃料評価の難しさ
(1)不動産鑑定士の一般的な業務
不動産鑑定士は、国土交通省の管轄資格であるため、地価公示・地価調査、公共用地の買収などの「更地」の評価が主要な業務です。もちろん、全国大手事務所のような不動産の証券化評価に特化している事務所も存在しますが、地方においては「更地」評価の割合が高い事務所が殆どかと思います。そのため、賃料の評価を行う機会が少なく、経験を積むことが難しいニッチな分野になっています。

(2)評価対象が事業用不動産
賃料の評価の対象となる不動産は、店舗、事務所、倉庫、ホテル等の事業用不動産が中心で、住居系の不動産は相対的に少ない状況です。理由は、住居系は賃料が安いため継続賃料の訴訟等になりにくいことや、不動産屋さんで相場が直ぐに分かるため不動産鑑定士に依頼するまでもないこと等が考えられます。
しかしながら、事業用不動産の成約賃料は、公開されていませんので(賃貸借契約を一般公開する人は誰もいません!)、データベースを整備している全国大手事務所でなければ評価に必要な情報を集めることが難しいと言えます。

(3)フォーマットが無い
賃料の評価に限りませんが、鑑定業界には試算表(計算方法を記載したもの)や評価書のフォーマットが整備されていません。不動産鑑定士は、不動産鑑定評価基準に則って評価書を作成しなければなりませんが、同基準は評価のルールを規定しているだけでフォーマットを提示してくれる訳ではないので、各鑑定事務所は用途ごとの試算表や評価書を独自に整備する必要があり、個人事務所には大きな負担になっています。

3.最後に
以上のとおり賃料の評価は不動産鑑定士にとって難易度の高い案件ですので、依頼する場合は、鑑定事務所を慎重に選ばれた方が良いかと思います。次回以降は、賃料評価の内容について説明します。

回答者 不動産鑑定士 佐々木 哲
佐々木不動産鑑定事務所
不動産鑑定士 佐々木 哲
〒810-0004 福岡市中央区渡辺通2-6-20 ラクレイス薬院203
TEL092-791-1873 FAX092-791-1893
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