不動産鑑定士の仕事

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福岡!企業!元気!のための法律ワンポイント 《令和4年7月号》
賃料評価の基礎知識B

1.はじめに
今回は、賃料の色々な形態を説明します。

2.募集賃料と成約賃料
募集賃料とは、空室部分の募集をおこなうための賃料で、オーナー側が勝手に決めている賃料です。一方、成約賃料はオーナーと入居者が実際に合意した賃料です。
オーナー側は少しでも高く貸したいという希望を持っているので、募集賃料は高くなる傾向にあります。但し、マーケットの需給バランスや当事者の個別事情(早く空室を埋めたいとか)などを踏まえて成約賃料は決まるので、必ずしも募集賃料=成約賃料となるわけではなく、募集賃料を下回って成約することも多いです。
不動産投資を行う場合は、募集賃料ベースの収支計画では絵に描いた餅になる恐れがあるので、物件の競争力等を踏まえた成約賃料ベースの収支計画を作成することが重要です。

3.固定賃料と変動賃料
固定賃料とは賃料額が一定期間固定された賃料です。固定賃料は、住宅、オフィス、物流施設等で採用されています。
一方、変動賃料は、テナントの売上等に連動して決まる賃料で、歩合賃料とも言われます。テナントの売上高等に基づく賃料ですので、売上高の把握が容易な商業施設やホテルなどで採用されるケースが多いです。

4.最低保証賃料
前記の変動賃料は、テナントにとっては、売上が無ければ支払い賃料が少なくて済むというメリットが有ります。しかし、オーナーにとっては、賃料が大幅に引き下げられると商業施設などを安定的に運営することが出来なくなるので、最低保証賃料として売上が落ちた月も最低限の賃料を受け取ることができる契約を結ぶことがあります。
例えば、変動賃料と最低保証賃料を組み合わせて、「基準売上高500万円を下回る場合は、最低保証賃料50万円とし、売上高500万円を超える部分については、売上高の20%相当額を変動賃料として最低保証賃料に加算する。」といった契約内容を定めることがあります。

5.グロス賃料とネット賃料
賃貸借契約の対象となる範囲(面積)によって、グロス賃料とネット賃料とに区別する場合があります。グロス賃料は専有部分のほかに廊下やトイレ等の共用部分も含めるのに対して、ネット賃料は専有部分のみを対象とした賃料です。
グロス賃料とネット賃料を混同して賃料額を査定している鑑定評価書もありますので、どちらの賃貸面積に基づくものか注意が必要です。

6.最後に
次回も賃料について説明します。

回答者 不動産鑑定士 佐々木 哲
佐々木不動産鑑定事務所
不動産鑑定士 佐々木 哲
〒810-0004 福岡市中央区渡辺通2-6-20 ラクレイス薬院203
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