不動産鑑定士の仕事

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福岡!企業!元気!のための法律ワンポイント 《令和5年1月号》
賃料評価の基礎知識H

1. はじめに
新規賃料の鑑定評価の手法として、これまで「積算法」と「賃貸事例比較法」を説明しましたが、今回は、「収益分析法」を紹介します。

2.収益分析法とは
収益分析法とは、鑑定評価基準によると「一般の企業経営に基づく総収益を分析して対象不動産が一定期間に生み出すであろうと期待される純収益を求め、これに必要諸経費等を加算して試算賃料を求める手法」とされています。
しかしながら、同基準では、肝心かなめの純収益の査定方法が明示されていないため、実務上は、売上高や営業総利益に対する賃料負担力から収益賃料(負担可能賃料)を求めるアプローチが採用されています


査定フロー

3.収益分析法が有効なケース
収益分析法は、事業収支が不動産の価値に強く結びついているホテル、商業施設、ヘルスアアセットなどの事業用不動産に有効とされます。
なお、以前は事業用不動産の収支の情報が無かったため収益賃料を分析する機会は限られていました。しかし、ホテルや商業施設などがJリートに組み入れたことにより有価証券報告書に事業収支が開示され、事業用不動産の収支構造や賃料負担力を分析する環境が整備されました。
ただし、事業用不動産は、同一の用途であってもオペレーターや事業形態の違いで収支構造は大きくことなるため、個別の事業特性に応じた負担可能賃料を求める必要があります。

4.最後に
次回も賃料の評価手法について説明します。

回答者 不動産鑑定士 佐々木 哲
佐々木不動産鑑定事務所
不動産鑑定士 佐々木 哲
〒810-0004 福岡市中央区渡辺通2-6-20 ラクレイス薬院203
TEL092-791-1873 FAX092-791-1893
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