不動産鑑定士の仕事

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福岡!企業!元気!のための法律ワンポイント 《令和5年5月号》
継続賃料B

1. はじめに
継続賃料の評価は、現行の契約を前提として、適正な賃料を求めます。したがって、締結済みの賃貸借契約の内容は、評価額(賃料額)に影響を与える重要な要因ですので、今回は「契約内容の確認」を説明します。

2.契約内容の確認について
鑑定評価基準では、賃貸借契約について、@契約の種類・目的、A契約当事者、B契約期間、C賃貸形式と契約数量、D月額支払賃料、E一時金の有無とその内容、F賃貸条件等にかかる特約を確認することとしています。
(1)契約の種類・目的
賃貸借契約は、普通借家契約、定期建物賃貸借契約、一時使用の賃貸借契約等に分類されます。定期建物賃貸借契約は、賃料増減請求権が排除されますので、継続賃料の評価の対象外になります。また、一時使用の賃貸借契約は、借家の規定が適用されないため、これも継続賃料の評価の対象外です。
(2)賃貸形式と契約数量
契約上、建物のどの部分が賃貸借の範囲なのかを明確にする必要があります。例えば、オフィスビルに入居するテナントは、専有部分のみのネット面積で契約する場合が一般的ですが、一棟貸しの場合、エントランスや共用廊下を含んだグロス面積で契約していることが多いです。したがって、継続賃料評価では、算定の基礎となる面積が、ネット面積なのか、グロス面積なのかを区別することは当然の作業ですが、両方の面積を混同して査定している評価書は意外と多いです。特に、商業施設の場合、グロス面積の50%〜70%相当がネット面積ですので、両者を混同して評価すると、間違った評価になってしまいます。
(3)資産区分
どこまでがオーナー資産で、どこからがテナント資産なのかといういわゆる「資産区分」によって、賃料が発生する範囲が異なるため、これを明確にすることが必要です。特に、商業施設やホテルの賃貸借の場合、スケルトン貸しが一般的であるため、テナントが設置した内装や空調等の設備部分は、評価の対象外となりますので、この部分から賃料を発生させないように評価しなければなりません。

3.最後に
次回も継続賃料の評価について説明します。

回答者 不動産鑑定士 佐々木 哲
佐々木不動産鑑定事務所
不動産鑑定士 佐々木 哲
〒810-0004 福岡市中央区渡辺通2-6-20 ラクレイス薬院203
TEL092-791-1873 FAX092-791-1893
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