不動産鑑定士の仕事

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福岡!企業!元気!のための法律ワンポイント 《令和5年7月号》
継続賃料D

1. はじめに
賃料の増減額請求を行う場合、どの段階で不動産鑑定士に鑑定評価書の作成を依頼すれば良いかを解説します。

2.賃料増減交渉の一般的な流れ
ビルのオーナーが入居テナントの家賃を50万円から70万円に値上げしたい場合、まずは当事者間で交渉することになりますが、テナントが値上げをすんなり受け入れれば、最もラッキーと言えます。
しかしながら、テナントが合意しない場合、法的な手続きとして調停手続きが用意されています。調停手続きにおいては、調停委員の仲介の下、当事者間で話し合いが行われます。
更に、調停が成立しない場合は、裁判を起こすことなり、不動産鑑定士が作成した鑑定評価書の金額(賃料)等に基づき適正な賃料を争うことになります。


時間軸2

3.どの段階で不動産鑑定士に依頼するか?
不動産鑑定士に依頼する時期としては、大まかに「当事者間での交渉段階」→「調停段階」→「訴訟段階」の3つの時期が想定されますが、最初の「当事者間での交渉段階」がベストと考えます。この段階で依頼することによって、値上げの余地があるか、値上げ幅はどのくらい有りそうか等を交渉する前の段階で把握することが出来ます。
ただし、継続賃料の鑑定評価書は、内容が複雑なため報酬が高額になる傾向にあり、全国大手事務所に依頼すると150万円から200万円程度かかるケースも珍しく有りません。その場合、周辺の賃料相場を把握する目的で、継続賃料ではなく、新規賃料の鑑定評価を依頼することも考えられます。

4.どの不動産鑑定士に依頼するか?
継続賃料は鑑定費用が高くなるため依頼者の負担は大きくなります。低廉な報酬で鑑定評価を行う不動産鑑定業者を探せば見つかるもしれませんが、継続賃料案件は能力差が明確に出るため、安かろう悪かろうにならないように注意が必要です。

5.最後に
継続賃料の評価を依頼するタイミングについて解説しましたが、最後の訴訟段階では必要な証明書ですので、早めに不動産鑑定士に依頼して戦略を練った方が良い結果となると考えます。
次回も継続賃料を説明します。

回答者 不動産鑑定士 佐々木 哲
佐々木不動産鑑定事務所
不動産鑑定士 佐々木 哲
〒810-0004 福岡市中央区渡辺通2-6-20 ラクレイス薬院203
TEL092-791-1873 FAX092-791-1893
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