1. はじめに
今回は、賃料についての争いが増加傾向にある高齢者施設について説明します。
2.高齢化の進展
日本は、世界一の高齢化先進国であり、2023年時点で65歳以上の高齢者人口は、約3,600万人、総人口に占める割合は約29%です。また、要介護率が高くなるとされる75歳以上は2,000万人を超え、80歳以上が総人口に占める割合は10%を超える水準になっています。すでに人口減少局面を迎えている日本においては、総人口に占める高齢者(65歳以上)の割合は、2040年には34.8%、2045年には36.3%に上昇することが見込まれています(国立社会保障・人口問題研究所の推計)。
3.高齢者向け施設・住宅
高齢化の進展を背景に高齢者向け施設・住宅の需要が高まっています。
有料老人ホームは、平成10年においては施設数288、定員数30,792人でしたが、平成20年には施設数2,846、定員数208,827人に増加し、令和元年には施設数14,118人、定員数539,995人に急増しています。
また、近年増加しているのはサービス付き高齢者向け住宅とよばれる高齢者向け住宅です。サービス付き高齢者向け住宅は、物件に対して賃貸借契約を結んで入居し、事業者から介護・生活支援サービスの提供を受けるため、居住者の自由度が相対的に高いところが特徴です。また、入居者の費用も有料老人ホームより抑えられている場合が多く、今後も増加が見込まれています。
4.高齢者向け施設・住宅の継続賃料
所有者から土地・建物を賃貸している高齢者向け施設・住宅は、コロナ禍を経て継続賃料を争っている物件が散見されます。
固定資産税・都市計画税や修繕工事費用等の諸経費が上昇したことを理由としてオーナーサイドが賃料の増額が求めるケースがありますが、このような賃貸に係る経費負担の増加は、賃料増減請求を行うための事情変更に該当するものと考えられます。他方、介護事業者サイドは、人手不足を背景として人件費が増加し利益が圧縮されたため、賃料の減額を申し入れるケースもあります。
5.最後に
次回も継続賃料を説明します。
回答者 不動産鑑定士 佐々木 哲
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