不動産鑑定士の仕事

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福岡!企業!元気!のための法律ワンポイント 《令和6年11月号》
継続賃料21

1. はじめに
今回は、新規賃料を求める鑑定評価の手法である「収益分析法」について説明したいと思います。

2.収益分析法とは
収益分析法は、鑑定評価基準によると、以下のように規定されます。
「収益分析法は、一般の企業経営に基づく総収益を分析して対象不動産が一定期間に生み出すであろうと期待される純収益を求め、これに必要諸経費等を加算して対象不動産の試算賃料を求める手法である。
収益分析法は、企業の用に供されている不動産に帰属する純収益を適切に求め得る場合に有効である。」

3.実務上の求め方
鑑定評価基準は、例によって詳細な算定方法を示していないため、これが正解というものが存在しませんが、一般的には、営業利益(不動産関連経費控除前)に対する賃料負担力から求めるアプローチが採用されています。


査定フロー

4.営業利益は、実際の営業利益で良いか?
 実際の営業利益とは、テナントの損益計算書に記載される営業利益のことですが、これをそのまま採用した場合、大きな問題が生じます。
理由としては、中小企業の赤字法人比率は60%超とされているように、企業によっては、節税目的等で経費を多めに積み増して、営業利益を圧縮している可能性があるためです。売上が増加していても、営業利益が赤字の場合、収益賃料は0円となってしまうので、妥当性に欠けます。
また、損益計算書の営業利益を圧縮にすると新規賃料・継続賃料を引き下げることが可能という手法が肯定されると、不動産取引の安全が害され、賃貸向けの事業用不動産マーケットは大混乱します。
したがって、収益賃料を査定する場合は、売上、経費、営業利益の各段階において、業界の標準的な指標と一致しているかどうかの検証は、最低限必要と考えます。

5.最後に
 次回も継続賃料を説明します。

回答者 不動産鑑定士 佐々木 哲
佐々木不動産鑑定事務所
不動産鑑定士 佐々木 哲
〒810-0004 福岡市中央区渡辺通2-6-20 ラクレイス薬院203
TEL092-791-1873 FAX092-791-1893
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