【初めに】
9月号から年金にまつわるよもやま話を担当させていただくことになりました社会保険労務士の堀江と申します。福岡県内あらゆる地域で年金の相談や手続きをさせていただいております。私がこれまで見聞きしたり、経験した貴重な事例を皆様方にわかりやすく伝え、公的年金に対する理解を深めていただければと思います。
ただ、事例そのものの個人情報に関する箇所は、多少修正してお伝えすることになりますので、その点はご容赦ください。
第1回目は未支給年金についてお話しします。
【未支給年金】
いきなり未支給年金という聞きなれない言葉を持ち出しましたが、国民年金法19条に以下のようなことが規定してあります。
老齢基礎年金(国民年金)の受給権者が死亡した場合に、その死亡した者に支給すべき年金給付でまだその者に支給されていない年金がある場合には、その者の配偶者(内縁の配偶者を含む)、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹であって、その者の死亡の当時生計を同じくしていた者が、「自己の名」において、その未支給の年金の支給を請求することができるとされています。
年金は後払いになっており、通常偶数月の15日に前2か月分が支払われます。たとえば9月に死亡した場合、8月と9月分の年金は10月15日に支払われるのですが、すでに亡くなっていて銀行口座が凍結されているケースも多いでしょう。そういったとき、受給権者と生計同一であった配偶者等の一定の遺族が請求したらもらえるものなのです。
実務上は死亡したことを年金事務所に届けに行ったとき、いろいろな書類を持参するよう案内されます。(戸籍謄本、住民票、生計同一の申立書等)
これから「ふーんそういうこともあるんだ」というような2つの事例を紹介します。
【A子さんの例】
A子さんは結婚後、夫が一人っ子だったため両親と同居でした。子供に恵まれず、夫にも先立たれましたが、仕事もしていなかったことから、そのまま同居を続けていました。義父と義母の介護もすべて一人で行いました。しかし、最後に亡くなった義母の未支給年金はもらえませんでした。なぜならば、遺族の範囲に嫁は入っていなかったからです。
【B子さんとC子さんの例】
次にB子さんとC子さんの例を紹介します。2人は姉妹でしたが、理由があって姉のC子さんが8歳のとき他家へ養女に出されました。その後それぞれの人生を歩んだのですが、お互い連絡を取り合い、B子さんが独身で病弱だったこともあり、姉のC子さんは何くれとB子さんの世話をしていました。B子さんが亡くなった時、遺族はおらずC子さんが葬儀をとりおこないました。戸籍上は他人となっていますが、C子さんの未支給年金の請求は認められました。遺族の範囲の特例で、現在は姉妹ではないが、もともと姉妹であり、生計同一が認められたものと思われます。
回答者 特定社会保険労務士 堀江 玲子
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