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福岡!企業!元気!のための年金ワンポイント 《平成25年5月号》
男性の厚生年金61歳支給開始

【初めに】
 かなり前になりますが、昭和16年4月1日以前生まれの男性(今年72歳)は、60歳で定年したら、そのまま満額の(全部の)年金をもらうことができました。その後少しずつもらい始めの年齢が遅くなり、平成25年度から厚生年金の一部である報酬比例部分の支給開始が61歳となります。昭和36年4月2日以後に生まれた男性(女性は昭和41年4月2日以後生まれ)は、国民年金も厚生年金も開始が65歳からです。
 今日は、61歳支給となることで、これまでとどのあたりが違ってくるかお伝えします。

【繰り上げ支給】
 昭和28年4月2日以後に生まれた男性と昭和33年4月2日以後に生まれた女性は、報酬比例部分の支給がだんだん遅くなるのはふれました。ただ、会社に残れず、基本手当(失業保険)を何か月かもらっても、年金が始まるまで無収入だ。その間の生活費をどうしようと不安になられている方もいるでしょう。そのような時、年金を早くもらう繰り上げ受給という方法もあります。
ただ、注意すべき点がいくつかあります。
@ 減額された金額は一生涯続きます。(老齢厚生年金部分と老齢基礎年金部分が1ヶ月あたり0.5%の減額)また、すべての受給者の年金額が少しずつ下がり続ける可能性があります。
A 一度手続きしたら変更できません。
B 障害者になられても障害年金の申請ができません。
C 女性が繰上げをした場合、65歳になるまでに会社員の夫が死亡すれば、遺族厚生年金がもらえますが、どちらかひとつの年金しかもらえません。ほとんどのケースで、女性の繰上げした年金のほうが遺族厚生年金より安いので、自分の分が支給停止となります。

【賃金との関係】
 会社が、60歳から年金が支給されるまでの賃金をどうしたらいいかという問題もあります。今までは60歳以降厚生年金に加入して働いてもらう場合、一般的には中小企業の多くは、給料を6〜7割に下げ、在職老齢年金とハローワークからの高年齢雇用継続給付を組み合わせて、60歳前の7割程度を補うような制度設計をとっていました。でも、年金が61歳になると、1年間は年金がもらえないため、収入が激減します。その分企業が補てんしないといけない可能性もあり、人件費の負担が増します。補てんがなく6〜7割のままであれば、生活が成り立たないし、労働意欲がそがれることも考えられます。

【障害者と長期加入者】
 これまでは厚生年金保険の障害等級3級程度の状態にある方と、厚生年金の被保険者期間が44年(528月)以上ある方は生年月日に関わらず、60歳から65歳までの間に退職すれば、満額の厚生年金がもらえていました。(障害者の場合は申請が必要)今回の改正では、報酬比例部分をもらうときに合わせられることになりました。つまり、障害状態が3級程度の人は申請できるのが61歳です。長期加入者の方は、仮に60歳時点で、44年あり退職していたとしても、満額の年金がもらえるのは61歳となります。

【厚生年金基金】
 厚生年金基金に加入した人については、日本年金機構と厚生年金基金の両方に請求して両方からもらっていましたが、基金が機構に変わって支給する「代行部分」は、報酬比例部分の支給開始年齢からとなります。ですから61歳支給開始の方は基金も61歳です。基金独自から支給される「加算部分」については、基金の「規約」で違います。

【おわりに】
 気になるポイント4つほどあげましたが、一番大事なことは60歳以降の無収入の期間をできるだけ少なくすることだと思います。57〜58歳位になったら、一度これまでの人生や職歴をふり返ったり、今後の会社での立場や老後の過ごし方を考えてみることも必要になるのではないでしょうか。

回答者 特定社会保険労務士 堀江 玲子
堀江社会保険労務士事務所
特定社会保険労務士 堀江 玲子
福岡市早良区西新4-7-10西川ビル304
TEL092-836-8238 FAX092-836-8239
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