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福岡!企業!元気!のための年金ワンポイント 《平成25年6月号》
男性の厚生年金61歳支給開始(続編)

【初めに】
 先月このブログで"今年60歳になる男性の厚生年金の支給開始が61歳となります"とお伝えしました。その後あちこちの年金相談の現場で間違った理解をされている(ちまたの噂を信じている)方に出合いましたので、再度詳しく説明をさせていただきます。

【老齢厚生年金の支給開始年齢は?】
 昭和28年4月1日生まれまでの男性は、老齢基礎年金(国民年金)をもらえる25年の資格があり、厚生年金に1年以上加入していたら60歳から厚生年金の一部である報酬比例部分がもらえました。

 しかし、昭和28年4月2日生まれの男性からもらい始めの年齢が61歳、62歳、63歳と徐々に遅くなっていきます。生年月日で受給開始年齢が違うのです。

 一方女性は、もらい始めの年齢に男性と5年の差がつけてあり、たとえば昭和33年4月1日生まれまでの方は、60歳で厚生年金がもらえます。61歳支給となるのは昭和33年4月2日〜35年4月1日生まれの方です。

 では昭和28年6月生まれの公務員(共済年金)の女性はどうなるでしょうか?
 共済年金加入の方は、制度上男性・女性間に賃金格差がなかったため、年金の支給開始も5年の差がないのです。
 そのため女性であっても男性の生年月日で支給が始まりますので、61歳支給となります。
 それでは、民間(厚生年金)勤務が10年、公務員(共済)で30年の女性の支給開始年齢はどうなるのでしょうか?

 10年の厚生年金部分については、60歳から厚生年金の一部(報酬比例部分)がもらえ、64歳で厚生年金の一部(定額部分)が加算されます。

 30年の共済年金部分については、男性と同じ61歳支給となるわけです。
 もらい方が複雑になりますし、請求手続きも共済組合と日本年金機構と2か所にしないといけません。
 加入制度や生年月日の違いによって受給開始年齢が違うわけです。

【長期加入者の特例がなくなってしまった?】
 この1か月間にこの質問を3回受けました。
 一般的に中学卒業後大企業に就職し、定年まで勤め上げたという男性に多いのですが、厚生年金のみで44年(528月)あり、会社を辞めたら(パート・アルバイトはOK、厚生年金の被保険者でないこと)最初から厚生年金を満額(完成された形、報酬比例+定額部分)もらえるという特例です。
 この方に年下の3号被保険者の妻(年収130万円未満の被扶養配偶者)がいたら、配偶者手当も一緒にもらえますので、年額で120万円程度増えることになります。

 昨日の年金相談会でもこんな相談がありました。

 「自分は勤続42年弱、あと2年強勤めれば、長期加入者になるので、それまでは頑張って働こうと思っていました。だけど、この特例がなくなったと聞き、がっかりしました。1年間の雇用延長はしましたけど、そこでやめようかと考えています。国は弱者いじめみたいなことばかりしますね。」

 「え!? それはどこから聞かれたことでしょうか? 長期加入者の特例は現在のところなくなっていませんよ。遠い将来のことは不明ですが、間違った情報でお辞めになられたら危ないですよ」

 私はこれまで女性のお客様でしたが「長期加入者の特例を知らずに527月で辞めたけど、どうにかなりませんか」という相談を受けたことがあります。
 (1ヶ月だけ正社員になれないかと会社・ハローワーク・年金事務所・知り合い・親類に相談したけど、だめでしたとのこと。大変お気の毒でしたが、何もして差し上げることはできませんでした。)

 話を元に戻します。昭和28年4月2日〜昭和30年4月1日生まれの男性で、60歳時点で44年を満たして被保険者でない方は、長期加入者の特例により61歳から満額の年金が支払われます。定額部分だけが60歳から支給ということにもなりませんので、ご注意ください。配偶者手当である加給年金も61歳からです。

【在職老齢年金はどうなる?】
 60歳から老齢厚生年金(報酬比例部分)をもらえる方が、厚生年金に加入して働く場合、その方の年金と給料(直前1年間のボーナスの12分の1を含む)で調整されていました。わかりやすく言いますと、給料が高い方は年金が全部止まり、そこそこのお給料に下げられた方は、一部分年金がもらえ、給料が非常に低い方は年金を止めませんといった取扱いでした。

 昭和28年4月2日〜昭和30年4月1日生まれの男性は、もともと61歳まで年金が出ません。会社の賃金規程によりますが、60歳でぐっと給料が下がる方が多いと思われます。そこそこのお給料に下げられた方も、生活費の補てんとなっていた一部分の年金が1年間はまだ出ないわけです。在職老齢年金という給料と年金の調整が61歳からになるからです。

【おわりに】
 以上3点ほど最近の年金相談から気になったことを取り上げてみました。

回答者 特定社会保険労務士 堀江 玲子
堀江社会保険労務士事務所
特定社会保険労務士 堀江 玲子
福岡市早良区西新4-7-10西川ビル304
TEL092-836-8238 FAX092-836-8239
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