日本で短期間働いた(支払った)外国人は、支払った保険料が老齢年金に結びつかないため、掛け捨て防止の意味合いで保険料が戻ってくる制度があります。
国民年金にも厚生年金にも脱退一時金制度はあるのですが、最近こんなケースがありました。
彫の深いかなりイケメンのお兄さん(おじさん?)が見えられ、「間もなく日本を離れる予定なんだけど、2年ほど厚生年金に加入していたから脱退一時金の制度を教えてほしい。」
制度の概略は把握していましたが、細部まで関わったことがなかったのであわてて調べました。
彼はフランス語と英語と日本語、こちらは英語が日常会話程度ならOKの女性と日本語オンリーの私です。
通訳付きで四苦八苦しながらなんとか相談を終えました。彼も手続きの煩雑さに比べ、もどる一時金が安ければ請求しない。でも3万円以上戻るのであればやりたいと言っていました。
概算ですがなんと10数万円は戻ることがわかり、大喜びです。
脱退一時金の額=平均標準報酬額×支給率
※支給率は被保険者期間の月数・いつ辞めたか等によって決まっています。
添付書類:出国日が載っているパスポート、振込銀行口座の確認がとれるもの、 年金手帳、脱退一時金申請書等
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話が終わったところで、彼が1枚のはがきを差し出しました。「古いんだけど、こんなのを持っている。年金に関係ないよね」
なんと別の基礎年金番号が載った国民年金保険料未納の通知書でした。つまり、彼は過去国民年金に加入したことがあり、現在の基礎年金番号とは別人として管理されている記録があったのです。しかも驚いたことに、国民年金納付が2年ほど、国民年金3号被保険者期間が10年位あったのです。ということは、おそらく日本人の働いている妻がいて、彼を3号被保険者にしていた。その間彼は妻に生計維持されていた?日本を一人で出国するとは関係破局か?といらぬことまで想像しましたが、そうなると単に脱退一時金の説明だけではすみません。もらってしまうと年金の資格がなくなりますので、今後10年の資格で年金がもらえる法律が施行予定のなですが、それにも関係してくるのです。
今回請求しなければ、彼が65歳になった時、フランスから請求しても老齢基礎年金と老齢厚生年金がもらえます。
今回脱退一時金を請求すれば、65歳で可能ですが、老齢基礎年金(3号期間のみ)だけの少ない金額になってしまいます。
どちらがいいかわかりません。彼が決めることですが、「3号って何?彼女が僕の分払っていたの?」「いえいえ、払ってはいません。払ったとみなす制度です」「みなすって英語でなんて言うんだろう?」・・・と、またしばらく説明に時間がかかってしまいました。
でも、最終的に「え、僕65歳になったら日本の年金もらえる資格があるんだ!」と喜んで帰っていきました。
回答者 特定社会保険労務士 堀江 玲子
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