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福岡!企業!元気!のための年金ワンポイント 《平成26年6月号》
覚せい剤と障害年金

 連日のようにASUKAさんの報道が行われていますので、薬物中毒により障害者になった場合、障害年金が受給できるかについてお話しさせていただきます。結論から言いますと、医師が薬物と現在抱えている障害が薬物から発症したものだと認めているのでしたら、障害年金はもらえません。根拠条文を確認します。

 『国民年金法第69条 故意に障害又はその直接の原因となった事故を生じさせた者の当該障害については、これを支給事由とする障害基礎年金は、支給しない。』
 『第70条 故意の犯罪行為若しくは重大な過失により、又は正当な理由がなくて療養に関する指示に従わないことにより、障害若しくはその原因となった事故を生じさせ、又は障害の程度を増進させた者の当該障害については、これを支給事由とする給付は、その全部又は一部を行わないことができる』
 というものです。厚生年金保険法にも同じような条文があります。

 障害年金は、障害者の所得を補てんするために支給されるものですから、自分の行為が必然的に障害等の一定の結果を生むと分かりながら、あえて行うのであれば、支給しませんという趣旨です。第70条は「相対的給付制限」と言われているのもで、過失や心神喪失の場合は「故意」に含めませんというものです。

 しかし、平成18年1月31日の社会保険審査会裁決で認められたものがあります。
 この案件は、中学2年生頃からシンナー・覚せい剤を使っていた少女が、暴力団員と関係を持ち、精神・身体に異常をきたしたものです。審査請求時まで、覚せい剤使用が「故意」だということで障害基礎年金の支給が認められていなかったものです。しかし、この「故意」が本当に真実なのか検討されました。家出中の覚せい剤使用が彼女の意思で行われたものなのか、暴力団が若い女性をその支配下に置くために、半ば強制的に覚せい剤依存の状態に陥らせたのではないか、当時彼女は16歳にすぎなかったことを考慮すれば、その覚せい剤使用の多くが、故意に障害を発生させるという意思のもとに行われたと断定するのは困難であろうという結論になっています。そして、第69条を適用するには「故意」の存在を積極的に証明しないといけないとしています。結果、障害基礎年金2級が認められました。
 一般的には、日常生活での過剰なストレス等から、ただ逃れたいとの気持ちから薬物に走るのでしょうが、やはりちまたで言われるように、その代償と影響はとてつもなく大きいものだと言わざるを得ません。

回答者 特定社会保険労務士 堀江 玲子
堀江社会保険労務士事務所
特定社会保険労務士 堀江 玲子
福岡市早良区西新4-7-10西川ビル304
TEL092-836-8238 FAX092-836-8239
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