現在の年金制度では、民間の会社員は厚生年金に加入、公務員は共済年金に加入、自営業者やフリーターは国民年金に加入しなければならないとなっています。これまでそれぞれの制度ごとの決まり(法律)によって年金が支払われていたため、世間から共済年金が優遇されていると批判されていました。
この差をなくそうというのが10月からの被用者年金一元化の主な目的です。
すぐに共済年金と厚生年金が同じになるわけではありません。徐々に共済年金の制度に近づけようとするものです。ただ、改正点の中には現在の厚生年金を共済年金の制度に合わせるというものもあります。
障害者になっても公務員として在職していれば、障害共済年金は支給停止といってもらえません。今回の一元化によって在職中でも障害厚生年金と同じようにもらえるようになるという事例を紹介します。
心臓の状態が悪く、CRT−Dという(除細動器機能付き心臓再同期医療機器)を装着している国家公務員の紗希さん(40歳代後半)で、障害共済年金2級の権利がある方です。8年前の勤務先の健康診断で心電図の異常を指摘され、間もなくペースメーカーを入れました。その後状態は改善し、仕事もデスクワークだったこともあり普通に日常生活が送れていました。ところが2年前に急激に悪化し、CRT−Dの手術を余儀なくされました。
初診日が厚生年金加入中であれば、働いていても障害厚生年金が受け取れますが、公務員は身分保障が手厚いこともあり、在職中は支給停止(もらえない)となっていました。
1・2級の人は1階部分として障害基礎年金が国から出ますが、これは止められることなく受給できます。紗希さんはシングルマザーで13歳と15歳の二人のお子さんがいますので老齢基礎年金に加算もつきます。以上のことをまとめてみます。
| 一元化前 | 一元化後 10月から施行、支払いは11月分から |
障害共済年金 | 1〜3級支給停止 | 紗希さんの場合2級で年60万円 (個人の給料により違います) |
障害基礎年金 | 2級で年780,100円 子の加算2人で449,000円 | 2級で年780,100円 子の加算2人で449,000円 |
合計の金額 | 1,229,100円 | 1,829,100円 |
※一定の配偶者がいれば障害共済年金に224,500円の加算がつきます。
※子の加算は18歳到達年度までです。
※共済年金には職域部分という加算がつきますが、これは在職中であれば、一元化後も止まったままです。
回答者 特定社会保険労務士 堀江 玲子
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