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福岡!企業!元気!のための年金ワンポイント 《平成27年12月号》
厚生労働省再審査請求公開審理事例2

 先月に引き続き遺族厚生年金の再審査請求事例をご紹介します。

 老齢厚生年金をもらっている夫が死亡した場合、通常妻は遺族厚生年金を受給することができます。しかし、受給するにあたり生計同一・生計維持(わかりやすく言うとお財布が一緒で一緒に住んでいる)条件を満たしているか、妻の年収は850万円未満かを審査されます。

 今回のケースは生計維持条件を満たしていないとされたものです。死亡者が罪を犯して刑務所に収監されたため、いろんな理由から離婚届を提出。しかし、実際は内縁関係が続いていたのでした。
元夫は90歳で無期懲役中に死亡。高齢の妻は少額の国民年金しかなかったので60歳過ぎの息子と生活を共にしていました。日本年金機構が遺族厚生年金を不支給とした理由は、死亡した当時夫から生計を維持されておらず、息子から生計を維持されていたためというものでした。
しかし、準備されていた書面等で次のようなことが判明しました。

・無期懲役で刑務所に夫が収監されたため、いろんな事情から離婚し別居せざるを得なかったが、両者の婚姻の意思と関係性は離婚前と何ら変わらなかったこと。妻は毎月1回定期的に元夫に面会に行き、その記録も残っている事。
・息子と同居し、生活をみてもらっていたのは妻の年金のみでは生活できなかったからであり、死亡した元夫は刑務所内で得た作業収益を少ないながら妻に送っていた記録もある事。

出席している参与からは、刑務所に収監という特別な事情で別居をせざるを得なかったものであり、生計維持関係を問うのは今回のケースでは死亡日前ではなく、収監前ではないかとする発言や実質上の生計維持関係はあったとみるのが妥当との発言も相次いでありました。

おそらく今回の請求は認められるのではないでしょうか。

回答者 特定社会保険労務士 堀江 玲子
堀江社会保険労務士事務所
特定社会保険労務士 堀江 玲子
福岡市早良区西新4-7-10西川ビル304
TEL092-836-8238 FAX092-836-8239
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