9月号では年金の支払いは2か月分の後払いなので、年金受給者が亡くなった場合、必ず支払われていない年金が生じ、それを未支給年金といって一定の遺族が受け取れますというお話をしました。
今月号はもう少し深く掘り下げて解説します。
〇遺族の範囲と順位
未支給年金を受け取るためには2つの条件があります。
・配偶者・子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹・三親等内の親族であり、
・死亡の当時その年金受給者と生計が同じだった者です
この2つ目の条件の意味を間違えると、仮に子供であってももらえない場合がありますので注意が必要です。
夫死亡後、一人暮らしをしていたおばあちゃんが亡くなったとします。このおばあちゃんには遠く離れて暮らしていますが、長男・長女2人の成人した子供がいます。一般の方は「生計が同じ」と聞くと一緒に生活をしていると考えるようですが、必ずしも一緒に住まないといけないということではありません。おばあちゃんからでも又は子供さんからでもいいですから金銭的なやり取り・電話やメールでの交流・食事を共にする・日用品の購入等の交流があれば生計同一関係があるとなります。
親子であっても、10年も行方知れずでまったく音信や交流がなかったとしたら生計同一関係があるとはなりません。
未支給年金の請求手続きとしては、住民票が別々の場合それぞれの住民票・親族関係がわかる戸籍謄本・「生計同一の申立書」が必要です。「生計同一の申立書」には三親等内の親族以外の方から証明してもらう記載欄がありますので、これを書いていただくのは少し煩わしいかもしれません。中には書いてくれる人が誰もいないと言われるケースもあります。一般的には、民生員・古くからの友人・隣人・職場の上司・老人介護施設の事務長等に書いていただくケースが多いです。
年金機構内部で審査の後3カ月ほどして「未支給年金支給決定通知書」が届きます。税金上は一時金扱いとなります。
順位に関して、過去こんなことがありました。上記のおばあちゃんと2人の子供がいるケースです。生前おばあちゃんの面倒をみていたのは長女でした。しかし、葬儀や対外的な手続きは長男が行い、未支給年金の手続きも長男が行いました。長女に報告をしていなかったのか、数日後また長女が未支給年金の手続きに来て、未支給年金は自分が世話をしたので自分のものだと主張されました。
長男のした請求は、全員のためにその全額について行ったとみなされますので、配分に関する争いは、日本年金機構は関知しません。私法上で争ってくださいとなります。ですから手続きを先にした長男の口座に入金されることになるのです。
1〜2か月分の未支給年金と言っても中には数十万円になる方もいますので、もめる場合も時々あります。
回答者 特定社会保険労務士 堀江 玲子
|