これまで障害年金の基本的な内容や流れについてご説明しました。今回から「障害年金にまつわる関連事項」「2つの障害が重なった場合」「請求が認められなかった場合」等について説明していきます。
今回は障害共済年金を取り上げます。
公務員の障害年金を支給する共済組合は大きく分けて3つあります。国家公務員共済組合連合会(所属している職業で言うと自衛隊員、税務署職員、刑務所の刑務官等)、地方公務員共済組合連合会(市役所職員、公立小・中学校の教職員、消防署員等)、日本私立学校振興・共済事業団(私立幼稚園・私立中高一貫校・私立大学の教員等)です。
平成27年10月に被用者年金の一元化と言って、会社員・公務員に関わらず同じ給料であれば保険料負担も同じで、将来の年金受給額も同じになるような法律が施行されました。
ということは、一元化前は公務員の年金は会社員に比べかなり優遇されていたとも言えます。共済年金を厚生年金のレベルにまで徐々に落としていこうというものです。
一元化前の障害共済年金と一元化後の障害共済年金の違いに焦点をあてます。
@ 障害厚生年金や障害基礎年金を申請するには納付要件(保険料を一定期間払っておかないと申請そのものができないこと)が必要だと説明しました。しかし、障害共済年金の場合、初診日に公務員であれば納付要件は必要ありません。
A 公務員には職域加算といって3階部分があります。20年以上の勤務の有無によって少し金額が違いますが、厚生年金より優遇されている部分となり、障害共済年金にもあてはまります。
B 公務員は民間サラリーマンと違い、職の安定性が担保されていますので、一元化前は在職中に障害共済年金に該当しても2階部分の障害共済年金部分は停止されていました。ただ、1階部分の国が支払う障害基礎年金は給料の額に関わらず受け取れます。
C 公務員在職中に障害共済年金を申請するには、職場の責任者の印鑑が必要だった為、将来の職業人生を考え、特に精神関係の傷病で申請をためらうケースがみられました。退職後は直接共済組合に提出できます。
D 手続き書類・様式・申請手順が各共済組合でバラバラでしたので、複雑でした。一元化後の申請については障害厚生年金(日本年金機構)と同じになりましたが、提出先は一元化前と変わらず共済組合です。
E 一元化後の申請については、在職中でもAで述べた支給停止がなくなりました。これまで3級にしか該当しないので申請しなかった公務員(例えば、人工弁や人工関節は3級相当で、1階部分の障害基礎年金がなく2階部分も支給停止だった)にとって、一元化は朗報となりました。
以上、制度上の違いについて説明しましたが、障害年金についていえばどの制度に加入していたとしても、当事者の傷病自体からくる痛み・苦しみ・経済的な不安・家族や周囲との関係性等は変わりません。障害年金の権利獲得が少しでも日常生活の質の向上につながればと思います。
回答者 特定社会保険労務士 堀江 玲子
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