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福岡!企業!元気!のための年金ワンポイント 《平成30年5月号》
障害年金事例C

 最近のショックな出来事に俳優の大杉連さんの死亡のニュースがありました。渋い俳優さんで大好きでしたが、激務の影響でしょうか、死因は心不全だとか。心不全は死亡原因ではなく、結果として心臓が働かなくなったというものだそうです。
 今月号は心臓に関する障害年金の事例を取り上げます。
 日本年金機構の障害認定基準では、心臓の障害の程度は、呼吸困難、心悸亢進、尿量減少、夜間多尿、チアノーゼ、浮腫等の症状、X線、心電図等の検査成績、一般状態(身の回りのことがどの程度できるか、介助が必要か等)治療及び病状の経過等で総合的に認定されますが、少なくとも1年以上の療養を必要とするものとなっています。

 1例目は、完全房室ブロックによりペースメーカーを装着された54歳の会社員男性です。
 完全房室ブロックとは、心臓の電気信号の通り道が途中でブロックされて電気が流れなくなることです。そうなると心房から心室に電気が来なくなり心室が収縮できません。すると、体に血液が循環しないので死んでしまうことになるのです。
 この男性は、商社の支店長をされていたエリートサラリーマンで、夜は接待、休日は接待ゴルフと日々ゆっくりすることもなくタイトなスケジュールで働いていました。めずらしく自宅でくつろいでいた休みの日に倒れ、救急搬送。当日ペースメーカー装着の手術を受けました。ペースメーカー装着は障害厚生年金3級と決まっていて、給料が高かったので、受給額は月11万円でした。無理をしないような生活にペースダウンをして、お酒は控えるよう主治医から注意されていましたが、障害年金は給料との調整もなく、「助かるな」と喜ばれていました。

 2例目は、公務員在職中にCRT-D(除細動器機能付き心臓同期医療機器)を入れた49歳の重症心不全の男性です。
 CRT-Dとは、心臓のリズムに何らかの問題が生じた場合に備え、監視と治療を行う目的で設計されている機器で、心不全の症状に対するリスクをかなり改善させます。この機器を入れたら原則2級です。この男性は20歳代から時々意識を失う・呼吸困難になる・疲労感が酷い等の症状に悩まされ、休職して入院・手術を受けました。その後よくなったり悪くなったりを繰り返していますが、今後劇的に改善するには心臓移植しか方法がないようで、現在順番待ちの状態です。妻子(2人)がいますので、障害共済年金を月17万円位受給されていますが、仕事は退職せざるを得ませんでした。

 3例目は、大動脈解離の45歳の男性です。入浴中に激痛に襲われ、救急搬送されました。人工血管を入れる手術は成功しましたが、下半身が動かなくなる麻痺が残ってしまいました。大動脈解離は、急激に発症し死亡率の高い重篤な疾患です。大動脈とは心臓から出て全身に血液を送る非常に大きな血管で、3層から成り立ち、その膜から血液が壁の中に流れ出したものです。人工血管に取り換えないと90%以上の方が24時間以内に死亡するそうです。人工血管装着は3級ですが、結論は出ていません。

 こうしてみると働き盛りの男性が多いようです。高血圧・糖尿病・高脂血症にならないようにすることが、心臓病の危険因子を減らすことになるそうです。

回答者 特定社会保険労務士 堀江 玲子
老齢・遺族・障害年金・脱退一時金・労災・加入記録の調査、手続き等
堀江社会保険労務士事務所
特定社会保険労務士 堀江 玲子
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