人生いろいろ、年金もコロコロ

                     前へ<<               >>次へ
福岡!企業!元気!のための年金ワンポイント 《平成30年7月号》
障害年金事例E

 今月号は生活習慣病である「糖尿病」と障害年金を取り上げます。
 実は私も糖尿病予備軍なので、食事に注意を払い・日々運動をしないと将来恐ろしいことになるかもしれないのですが、映画のシニア割引が顔パスで大丈夫なので、障害年金申請に至ることはないと思います。
 現在30歳〜50歳代の働き盛りの方で、飲み会後にはラーメンを好んで食べるという嗜好の方、社会人になってから運動をほとんどやらないという方は要注意です。

 糖尿病による障害年金は、「症状が出たので障害年金を申請したい」という希望がかなわないことが往々にしてあります。会社の健康診断で血糖値が高いと指摘を受けていたけれどほったらかしにしていた等、糖尿病は自分で気づくほどの症状が出るまでに10年〜20年ほどたっている事も多いのです。仮に受診していても、当時のカルテがすでに廃棄されており初診日の証明である『受診状況証明書』が取れず、請求を断念せざるを得ないケースもあるのです。

 今回取り上げるのは子供の頃から発症する1型糖尿病ではなく、主に中高年になってから発症する2型糖尿病です。糖尿病の合併症として、我が国失明原因の第2位である「糖尿病網膜症」、透析導入原因疾患の第1位である「糖尿病腎症」、温度や痛みが感じなくなる「糖尿病神経障害」、「虚血性心疾患」や「脳梗塞」の原因にもなります。また、神経障害から足が壊疽し、切断することも起こります。こういった合併症で申請するとしても、糖尿病関連で受診した病院が初診の病院になりますので、書類が揃わないことがあります。

 慢性の高血糖状態のことを糖尿病というのですが、障害年金に該当するのは「治療を行ってもなお、血糖コントロールが困難な症状の方」で以下の3つの条件を満たす方になります。
 1. 90日以上のインスリン治療を行っている方
 2. Cペプチド値、重症低血糖、糖尿病ケトアシドーシス、高血糖高浸透圧症候群のいずれかが一定程度の方
 3. 日常生活の制限が一定の程度の方(歩行や身の回りのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの)
 【用語や意味の説明】
 ※Cペプチド値を測定することでインスリン分泌の評価ができます。
 0.3ng/mL未満であることです。
 ※意識障害や昏睡状態になることが平均月1回以上あること
 ※糖尿病ケトアシドーシスや高血糖浸透圧症候群も昏睡状態になることですが、この状態の為に年1回は入院することとなっています。
 かなり重たい状態でないと認められないことがお分かりだと思います。

 健康日本21という厚生労働省が出している糖尿病に関する目標があります。
 2型糖尿病は遺伝因子と環境因子(生活習慣:肥満・食事・運動不足・ストレス)で決定づけられます。
 一次予防として @肥満者の減少 A日常生活における歩数の増加 B質量ともにバランスのとれた食事を勧めています。
 2次予防として @定期健康診断 A糖尿病検診における異常所見者の事後指導の徹底
 3次予防として @糖尿病有病者に対する治療継続の指導を徹底 B合併症の発症の減少

 上記のことから、糖尿病で障害年金を受給するとなると予防措置ができていなかった方と言えそうです。
 私が受けた過去の事例でも、単身男性で60歳の会社員の方がいました。身体に異変を感じ受診した時にはすでに糖尿病の末期状態、両目とも手術を受けましたが「糖尿病網膜症」で失明、障害厚生年金の1級となりました。勤務していた会社には60歳から再雇用の道があったのですが、遠く離れた東京で目の見えない状態では生活できず、60歳で定年退職、故郷の福岡に戻ってこられました。さいわいお姉さん2人がいましたので、介護を受けながら生活をしていらっしゃいますが、「日々楽しみが何もない」と言われていました。
 自分には関係ないと思いがちですが、日々の生活習慣が重要です。できるだけQOLが保てるように心がけましょう。

回答者 特定社会保険労務士 堀江 玲子
老齢・遺族・障害年金・脱退一時金・労災・加入記録の調査、手続き等
堀江社会保険労務士事務所
特定社会保険労務士 堀江 玲子
福岡市早良区西新4-7-10西川ビル304
TEL092-836-8238 FAX092-836-8239
HP http://hreiko-office.com/
                     前へ<<               >>次へ
人生いろいろ、年金もコロコロリストに戻る