今月号は健康保険制度についてお話をしたいと思います。
日本は国民皆保険制度になっていますので、誰でも何らかの健康保険制度に加入しています。中には健康保険料が高くて払えない方もいますし、病気をしないから払う気がしないと支払いを拒否される方もいます。私自身としては、他の先進諸国と比べても日本は医療水準も非常に高いですし、恵まれた制度の恩恵を被っていると感じています。
一般に健康保険制度の種類や加入手続きに関心がある方はあまりいないようです。特にこれまでずっと会社員だった方は、定年間際になり始めてどの健康保険に加入すればいいのか、手続きはどうしたらいいのか等質問されます。大きく分けて5つの種類に分かれます。
@ 健康保険組合と全国健康保険協会が行っている健康保険
これらの制度に加入しているのは会社員です。大企業であれば、自社で健康保険組合を設立・運営しているところもあります。規約で組合独自の給付や保険料の料率を決めることができます。
多くの中小企業は自社で健康保険組合が持てませんので、国が後ろ盾となっている全国健康保険協会(通称協会健保)に加入しています。
中には同業種の会社間で設立している建設国保や医師国保といった組合もあります。
現在非常に少なくなりましたが、日雇い特例被保険者といって、1日単位で健康保険に加入する日雇い労働者の方もいます。
A 船員保険
この制度に加入している人もぐっと少なくなりました。船員として船舶所有者に雇われている方は船員保険に加入します。この船員保険の中に健康保険制度が含まれています。
B 共済組合員である公務員は給料から「短期給付」という名目で健康保険料が差し引かれています。
C 組織に属していない働き方をしている自営業者、個人で農林水産業を営んでいる方、フリーター、無職の方は、お住いの市町村がおこなっている国民健康保険に加入します。夫は会社員だけれど年収が130万円以上ある妻は、夫の健康保険の被扶養配偶者になれませんので、国民健康保険に加入します。
D 75歳になると働き方や職業ではなく、年齢により全員「後期高齢者医療保険制度」に加入することになります。この制度の保険料も所得に比例し、原則年金から差し引かれています。
次に@の健康保険の保険料について少し触れてみます。
皆さん、「健康保険料は全国一律じゃないの?」とか「私の(妻)健康保険料は会社員の夫が払っているわ」とおっしゃいます。
でも残念ながら、健康保険組合により料率の違いがあり同じではありません。若い従業員が多く、財源にゆとりがあれば、多少低く抑えられているところもあります。
福岡県の協会けんぽに加入している中小企業の方であれば、平均の給料が28万円ですが、料率は11.8%(H30年分、介護保険料を含んだ40歳以上)となり、給料から差し引かれる健康保険料は16,520円であり、同じ金額を事業主も負担しています。
料率は都道府県で違い、一番低い県が長野県11.28%、15,792円、一番高い県がお隣の佐賀県12,18%、17,052円、その差は月1,260円です。結構な差ですよね。少し横道にそれますが、長野県の料率が低い要因の一つが、以前から予防医療に力を注いでいることで、昔から塩分の多い食生活の改善をし続けてきた県民性が上げられます。
長寿、医学の発展等により医療費は年々増大していますが、保険料負担も限度があります。私たち国民一人一人が医療費の増加を招かないように、日々の健康保持の姿勢が求められているのではないかと感じています。
回答者 特定社会保険労務士 堀江 玲子
|